Peace Ex Piece

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鳩とオリーブの葉、付け加えるとするなら人間か 第21話 オープンコンバット&エンゲージ

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本作品の内容はフィクションです。
登場する人物・団体・地名等は架空のものであり、実在する人物・団体等とは一切関係がありません。

また本作品には過激な表現が含まれておりますが、犯罪にあたる行為など実際に行われますと、刑法により厳重に処罰されますので絶対に真似しないでください。

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第21話 オープンコンバット&エンゲージ

 

 音速で追いかける。捕らえられない。

 光一「化け物かよ!?」

 このままじゃキャパオーバーする。急いでユウトと悠愛にコールした。二人とも快く引き受けてくれた。

 声「なんであいつは美姫ちゃんをさらうんだ」

 光一「知るか!」

 訳がわからん。いきなりすぎるだろ。

 唐突に鎧の男が立ち止まった。

 光一「観念しろよ。コスプレ野郎!」

 鎧の男はこちらを向いて言った。

 鎧の男「ゲイシー?」

 今なんていった? 

 「はっははははははハッ! 頼み事とは珍しいデスネェ? ガラハッド?」

 どこからともなくゲイシーが現れた。こいつ!

 光一「なんでお前が今さら!」

 ゲイシー「久しぶりデスカネー? アハハッ!」

 ふざけた野郎だ! こうなったら二人まとめて! 

 ガラハッド「足止めだ」

 逃げるつもりかよ!? そう易々といくかよ!

 ゲイシー「誰にいっているのでスカァ~? 一度も私に勝ったことがないクセニ? まぁいいでショウ」

 俺の前に立つゲイシー。まずい。こんな時に現れるなんて……。

 ユウト「お待たせしました!」

 悠愛「ごめん! パパ! 遅れた!」

 二人が駆けつけてきてくれた。頼んでいいのか? 相手は化け物だ。

 光一「少し耐えてくれるか……? 相手は強いなんてもんじゃない規格外だ」

 俺はピエロを見た。

 ゲイシー「アハハハハハハハハ!」

 狂ったように笑ってやがる。

 光一「あいつは人をも食べちまう化け物だ。それでも俺は美姫を追わなければならないんだよ」

 そうだ。あいつと二人を戦わせてはいけない。でも。

 ユウト「ええ!? 美姫ってあの美姫ちゃんですよね!? アイドルの」

 光一「そうだよ。事情は事が済んでからな? 友達として紹介してやるよ」

 そういや二人には言ってなかったな。てか言えるかよ。どこで情報が漏れるかわかんないんだ。

 悠愛「……」

 悠愛はゲイシーの姿を見てから声を失っている。あのおぞましい姿を見ればそれは当たり前の反応だろう。

 光一「悠愛。戦えるか? 帰ったら女の子の友達を一人紹介してやるよ。凄く可愛いんだぞ?」

 悠愛「大丈夫……。あはは……。嬉しいな」

 どうも歯切れが悪いな。でも。

 光一「博士! 聞こえてるな! ここに武器を二本頼む! 大至急だ!」

 俺もやつを追わなければならない。

 コンテナが降ってきた。俺に向かって射出された武器を二本キャッチする。大剣とナイフだ。

 光一「これはユウトに。あんまり振るな。すぐにキャパオーバーするぞ。重いからな」

 大剣をユウトに。

 光一「悠愛はこれだ。ユウトのアシストだ。やばくなったら二人で逃げろよ。俺のしてあげれるのはこれくらいしかない。ごめん。それとありがと」

 二人に礼を言う。無茶なお願いをしたんだ。

 ユウト「帰ったら美姫ちゃんとおしゃべり!」

 こいつもミーハーかよ。

 光一「そうだ。いくら女慣れるしてるお前でも一瞬で惚れるぞ。やらんが」

 ユウト「えっ? やらん……? もしかしてもう! 手が早すぎますよ!」

 ヤベッ! ガチで間違えた!

 光一「言葉の綾だっての!」

 ユウト「咲希ねぇ一途だと思ったら悠愛ちゃんといい美姫ちゃんといい! 見た目通りのチャラ男だったんですね!」

 光一「うるさいわ! ボケぇ! 帰ったら説明するからな! ちゃんと守れよ! 男を見せろ」

 そして俺は後を追おうと。

 ユウト「わかってますよ。先輩がいなくても男を貫き通す。先輩は外国語好きでしたよね。なら……オープンコンバット! (戦闘開始)」

  そうユウトが言った。外国語はカッコいいよな。少し中二っぽいか。

 

オープンコンバット&エンゲージ2

 

 光一「なんて速さだ」

 全力で追い付いたはいいが……。

 光一「どこまでいくんだよ」

 くそ! 目の前には首都最大のドームがある。野球とかするんだっけか。敵はドームに突っ込んでいった。俺も後を続くと鎧の騎士ことガラハッドがドームの中央に立っていた。

 ガラハッド「流石だな」

 その姿をみた俺は驚愕した。美咲を抱えていない!?

 光一「おい? どこにやった? 美咲をどこにやった! 」

 ガラハッド「私に勝ったら教えてやろう」

 光一「上等だ。すぐにけりをつけてゲロって貰う。博士ぇ!」

 空からコンテナが落ちてくる。それを素手で破壊し武器だけ手に取った。もう能力はフル解放だ。

 光一「エンゲージ(戦闘態勢に入る)だ」

 そして俺は敵に刃を向けた。

 

オープンコンバット&エンゲージ3

 

 もう幾度となく剣を交わせた。だが敵は涼しげな顔。

 ガラハッド「汝にとっての敵は、ためらいだ。本当に打ち倒す気で剣を振るっているのか?」

 敵は避けるまたは剣で受け止める。攻撃はしてこない。

 ガラハッド「敵のため火を吹く怒りも、加熱しすぎては自分が火傷するぞ」

 弾き飛ばされる。くそっ! イラつく! 子供が大人に遊ばれてる気分だ。

 ガラハッド「正義は武器に似たものである。武器は金を出しさえすれば、敵にも味方にも買われるであろう。正義も理屈さえつけさえすれば、敵だ」

 正義の意味なんか知らない。でも。

 光一「人さらいが正義を語るなよ!」

 前に出る。俺は敵を倒して美咲を取り戻す。

 ガラハッド「ふふっ」

 今笑いやがったのか?

 光一「何がおかしい!」

 ガラハッド「カなき正義は無能だ。正義なき力は圧制なのだ。力なき正義は反抗を受ける。今の汝のようにな。なぜならは、つねに悪人は絶えないから正義なき力は弾劾される。それゆえ正義と力を結合せねばならない。正義を振りかざしたとしても弱小なのではな」

 確かに力の無いくせに正義を振りかざすバカはそこらたへんのごろつきにもボコボコにされるだろう。例えば苛めだ。大勢が一人を苛める。それは酷い光景だ。許せない。だが傍観者であった者が止めたとしても大勢に負けて苛めの対象にされるだけだ。傍観者であった者は、正義を振りかざしたんだろう。でも力がなかった。

 光一「力がないから諦める? 出来るわけねぇだろうが! 大切な人をさらわれてんだぞ!」

 力がないからと言って正義を振りかざしてはいけない理由などどこにもない。

 ガラハッド「ならなぜ全力ではないのだ? 出させてやらなければいけないのか?」

 光一「戯れ言を!」

 俺が全力じゃない? ふざけるなよ。助けるためにこっちは全力で戦ってる。

 だが幾度となく打ち込んでも敵には当たらない。

 光一「くそっ!」

 吐き捨てる。なんで攻撃してこない。こちらが攻撃しては弾き飛ばされの繰り返しだ。

 ガラハッド「つまらない。世話が焼ける。出させてやろう。本気という物をな。人というのは真剣勝負に立たされたとき何かを掴む。汝のそれはなんだ? それが剣? 棒ではないのだぞ?」

 そういってガラハッドは横に右腕を振った。

 なんだ?

 右側のドームの壁が爆発した。

 はっ? ここはドームの中央だ。あの腕を振る動作が何かの起爆スイッチか何かなのか?

 ガラハッド「何が起こったのかわからないと言った顔だな。汝の連れの女はもうこの世にいないぞ。今の爆発の元に女はいた。意味がわかるな」

 あっ……

 光一「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 」

 こいつはいらない。存在してはいけない。

 光一「ふざけんなよぉ!」

 こいつをこの手で消す。気づくと俺は敵の目の前で大振りで……

 ガラハッド「大火傷だ。焼死しろ」

 喉元には敵の剣。

 これはもう……

 

オープンコンバット&エンゲージ4

 

 歯が立たない。優人はそう思った。

 「炎やら水やら土やら風を操るって魔法使いか何かかよ」

 ゲイシーと名乗るピエロは、踊っている。四代元素を身に纏って。

 「アハハハハハハハハ!」

 狂気の笑みがうるさい。優人はもう虫の息だ。一振りでさえ能力の許容範囲を越えそうになる。もう一振りも出来ない大剣は荷物でしかなかった。

 「このままじゃ悠愛を守れない」

 彼の背にはゲイシーを見てから怯えたように震えている女性がいた。見た目は子供だが成人である。

 「アハッ! アハーハ? もうイイカナ? イイヨネー? 」

 ゲイシーが意味不明な事を言っているが彼の耳には届かない。それだけ集中していた。

 「約束したんだよ。先輩とな! 悠愛を守れってね!」

 先輩と男の約束をした。カッコいい男を目指す優人には先輩である光一との約束は絶対だった。それほどに尊敬していた。カッコいい男を目指す動機はちっぽけだったかもしれない。それでも優人はそれに人生を捧げるつもりであった。決定付けたのは光一との出会いだが。

 「逃げるぞ! 悠愛!」

 悠愛の手を掴む。逃げることは恥ではない。光一はヤバくなったら二人で逃げろといった。だが悠愛は動かない。

 「アハー!」

 ピエロは狂ったように笑っている。

 「だめだよ」

 悠愛が口を開く。

 「ユウトは能力を解除して。私が戦う」

 そう言ってダガーを構える。

 「女の子に戦わせるなんて……それに敵の前で能力解除なんかしたら……」

 戸惑いを隠せないのは優人。

 「使わなければキャパは回復するの! カッコいい男はつべこべ言わんじゃないの?」

 痛いところを突く。

 「わかった」

 能力を解除した。その印に大剣が地面に大袈裟な音を立てて落ちる。

 

 この時を待っていた。

 

 「えっ……なん……で……」

 私は優人の腹にダガーを突き刺した。崩れ落ちる優人。

 「ごめんね。これも私とパパが一緒になるためなの。そのためにユウトが倒れなくちゃいけない。それだけだよ」

 道化師に目配せするとおどけたように手を振った。風が吹き荒れた。気づくとリストバンドが取れている。

 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 やめて。

 「悠愛……その手首の傷……」

 やめて。

 「見ないでぇ……」

 

 『パパなら見てもいいよ? あっやっぱりダメ』

 

 もしかしたらパパにも見られたかもしれない。

 誰にも見られたくない傷。それは私がわからない私が痛みを持って存在してることを確かめてた時期の証。心の痛みを誤魔化すために痛みを体にわからせていた。快楽主義はあの道化師と変わらない。

 「痛いよ……」

 こんな私は嫌だ。本当に好きになるやつなんかいない。だからこの体なんかどうでもよかった。男なんか服を脱いでしまえばみんな同じ。

 「そう思ってたのに……」

 涙がこぼれる。悲しみの。

 「パパを手に入れるためにはなんだってする」

 そう非道も邪道もましては道徳など重んじてはいられない。

 「そんなの間違ってる……好きになってもらう努力をしなくちゃ……」

 「わかってるよ……だけど……こんな汚れた私なんかパパは好きにならない! 現にパパは同僚の次はアイドルに夢中なんだよ!」

 なんで好きになっちゃったんだろ……。資格なんてないのに……。

 「パパが好き。誰にも渡さない」

 そう誰にも。

 「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」

 道化師が盛大に笑っている。 

 一番下にいたと思っていたのにまだ下があったなんてね。

鳩とオリーブの葉、付け加えるとするなら人間か 第20話 永久のような一瞬を重ねたい

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本作品の内容はフィクションです。
登場する人物・団体・地名等は架空のものであり、実在する人物・団体等とは一切関係がありません。

また本作品には過激な表現が含まれておりますが、犯罪にあたる行為など実際に行われますと、刑法により厳重に処罰されますので絶対に真似しないでください。

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第20話  永久のような一瞬を重ねたい

 

 美姫「それと絶滅危惧種じゃないもーん。それはパンダのことー」

 呑気に美姫は言った。いやいやマジかよ。パンダからテレビで見たことあるやつに変身とか聞いてねぇぞ。芸能人に会ったときはなんて言えばいいんだ。シミュレーションでもしときゃよかった。

 光一「先ほどはすいませんでした! 今までのご無礼をどうぞお許しください!」

 うん。土下座だね。男のプライドなんか捨てたよ。芸能人は、偉い。視聴率1%で約110万人が観てるのである。すなわち社会作るのである。

美姫「わー! やめてよ! 似合わないって!」

 俺の何を知ってるというんだ。

 光一「わたくしは余裕で土下座する男でございます。いや今さっき男のプライドを捨てさせて貰いました」

 情けないでござる。仕方ないでござる。サムライは、残念ながら滅んだのでござる。この国は、外国でいうジェントルマン(紳士)がいたらしいが今は、いないのでござる。

美姫「ねぇ顔を上げてよ。メインヒロインだよ? 困ってるよ?」

 何を言うとるんだ。芸能人。やっぱ普通じゃないのかな?

 光一「わたくしは、芸能人様に非礼の数々を働きました。よって顔を会わせれないのであります」

 メインヒロインには触れないでおこう。

美姫「私はあなたのことが好きなの! 一目惚れなの!」

 ブチッ!  こめかみの静脈が切れる音がした。ような気がした。

 光一「そんな簡単に人を好きになれるかボケがぁ! 一目惚れ? はっ! どこのチョロインだよ? んなのがメインヒロインだと? 笑わせるな! 物語ではな~。飽きられてんだよ! 失せろ!」

 場が凍る。

 やっちまった……。フラれた傷が塞がってないんだよ。

美姫「あはは。だよね。ごめんね。これ連絡先だからさ。受け取ってよ」

 名刺を渡される。俺はなにも言えない。美姫は、とぼとぼと歩きどこかに消えた。

 声「アホ」

 光一「知ってる」

 こうして遊園地での戦いは終わった。

 

永久のような一瞬を重ねたい2

 

 ピース「最近は出番がないっぴ!」

 家に帰って来た俺をピースが向かえる。出番? いや元から無いに等しいだろうが。無視する。

 寝るか。いや連絡するか。メールだと誠意が伝わらんな。電話か。

 プルルルルルルル。

 『はい。美姫です』

 『俺だ』

 『はい?』

 『俺だよ。ごほっごほっ! 風邪を引いてしまってね』

 これで声をわからなくする。

 『マネージャーさんですか?』

 『そうだよ』

 『大丈夫ですか?』

  『大丈夫じゃない。株に手を出してしまい、会社の金を使い込んでしまったんだ。それでな。今日中に500万円を返さないと、会計監査が入ってクビになってしまうんだよ』

 『めちゃくちゃ大変じゃないですか!』

 『そうだよ。だから美姫を頼りたいんだ。いいかな?』

 『今までのご恩があります! 頼ってください』

 『なら今から言う口座に500万振り込んでくれ』

 『わかりました。メモ帳を準備します!』

 アホか。こんなわかりやすい手口見抜けなくてどうする。本当に見抜くのが難しいのは、多人数の人間が出てきた場合だ。警察官と名乗る人間。弁護士を名乗る人間に次々も電話を代わられると見抜くのも難しくなる。録音した機械音声なども使われると厄介だ。それと電話中に効果音を使って劇場っぽく演出したりもするのも厄介。少しでも怪しいと感じたら警察に頼ろう。

 って警察に頼られるんじゃね!?

 『メモ帳を準備しました!』

 アホだった。

 『アホ。名乗ってなかったけどさっき助けた男だよ。名前は神城光一ね』

 『えっ……』

 状況が理解出来ないらしい。

 『今のはおれおれ詐欺の定番ネタらしいぞ。本に載ってた』

 『騙したの!? ひどい!』

 はぁ。

 『言っとくけどな。俺はおれおれ詐欺は許さない。だから対抗策を用意しとくんだ。騙されるやつが悪いなら相手を騙して悪者を成敗しないとな』

 世の中の悪い手口は、覚えておいたほうがいい。全てを潰すつもりでな。

 『カッコいい……』

 『カッコいいカッコよくないじゃないよ』

 ちなみにこんな知識を覚えるのは趣味でもなんでもない。勝手に覚えてしまうのだ。いやはや善良な市民を20年近くやってりゃ余裕で覚えるわ。

 『こうくんは、物知りなんだね。おれおれ詐欺の見抜き方を教えてくれたんでしょ? 優しいね』

 勘違いしてるのか? 気まぐれだよ。 それと。

 『こうくん?』

 『光一くんでしょ? だからこうくん』

 やめろ。あいつと被る。なんで略すんだよ。

 『光一でいいよ』

 『こうくんは私のこと美咲でいいよ?』

 聞いてんのか? 

 『上の名前を教えてよ』

 名刺にはフルネームでは書かれてなかった。偽名なのか。

 『やだ』

 『じゃあ呼ばない』

 用件が済めばそれでいいのだから。

 『やだ』

 知らん。

 『今日は怒ってごめん。それを謝りたかったんだ。それだけ』

 ブツ。通話をきった。寝るか。

 ピース「彼女っぽ? うざいっぽー」

 てめぇがな。

 

永久のような一瞬を重ねたい3

 

 朝になった。寝起きが悪い。いつものことだがそれでもだやい。仕事か……。いくか。

 テレビをつけると見たことあるやつが早速映っていた。そしてすぐ停電。これもいつものことだ。すぐに復旧。

 光一「世の中って案外狭いよな」

 声「価値観は人それぞれだがな。美姫ちゃんを軽くあしらうなんて光一は偉いな」

 光一「どこがだよ。憂さ晴らしに行ったら傷を広げられたって感じの気分だ」

 着信が鳴った。眠いので無視するか。

 ピース「うるさいっぴ!」

 光一「お前がうるさいよ!」

 ムカつくやつだなぁ。出ればいいんだろうが出ればよー。

 『もしもし神城です』

 『おはよ! こうくん!』

 だれ?

 『どなたですか?』

 『忘れたの? メインヒロインだよ!』

 こんな惚けたことを言うやつは一人しかいない。

 『悠愛か?』

 『誰よそれぇぇぇぇぇぇ!』

 違ったらしい。

 『なに。友達のいなさそうな人だと思わせて裏ではそりゃもうブイブイ言わせてるわけ? いや違うわ! あんあん言わせてるわけ?』

 失礼過ぎだろうが。誰が友達いなそうに思わせてんだよ。なにこのテンションの高さ? 朝なんですけど……。

 『悠愛ってのは俺の妹分みたいなやつだよ』

 『悠愛さんって女の子だよね? 多分、下の名前だよね? 私のことは呼ばないくせに。 その悠愛さんはこうくんのことなんて呼んでるの?』

 『パパ』

 『……』

 また失言した……。最悪だ。帰りたい。いやここ家だった。

 『嘘です』

 本当にパパと呼ばれてあるのがつらたん。

 『こうくんは、変態さんってメモっとくね』

 やめてください。

 

永久のような一瞬を重ねたい4

 

 仕事が終わって帰路ナウな俺。もうゲソゲソだ。げっそりの二乗でゲソゲソである。造語でありイカのことを言いたいんじゃない。

 すると俺を見つけたユウトが走ってきた。

 ユウト「元気になったんですか!? 心配しましたよ! 連絡くださいよ~」

 元気じゃねぇし。今日の昼の事務仕事の空気とか最悪だし。パソコンの前で泣きそうなやついるし。ついでに俺も泣きそうだったよ。

 光一「まぁ体調は少しずつ良くなってるよ」

 少しずつな。時間が解決はしてくれそうにないけど。

 ユウト「特訓します?」

 光一「いや。やめておこう。この町が滅んでしまう」

 最近は音速が普通になってきた。爆風を纏うので辺り一面が吹き飛ぶ。

 ユウト「先輩の力、凄まじいですもんね~」

 そりゃ経験値が違うからな。今、能力を使えるようになった少数の一般人でも赤子みたいなもんだ。俺は20数年使ってる。この能力は経験値が物を言う。使えば使うほど強くなる。理由は未だに不明だ。

 ユウト「それより今朝のニュース観ました? 昨日の夜、遊園地で戦闘があったらしいです。謎の勢力バーサス大剣を振るう青年! 先輩ですよね……」

 光一「うん……」

 やっべぇ有名人になりそう。この能力は、謎の光に包まれ覚醒する。何人か研究材料にされたらしいがまったくわけがわからないらしい。警察もお手上げだ。

 ユウト「大々的な活動は控えたほうが……」

 光一「いやわかってるけど俺が行かなかったら全滅してたかもしれない」

 ジャックがいてもキツいだろう。異形種は銃弾すらも効かない化け物だ。

 光一「異形種がまた大規模な戦闘を仕掛けてきたらすぐに呼べよ」

 ユウト「わかりました!」

 仕事が思ったより疲れた。

 光一「帰る」

 ユウト「お勤めご苦労様でした!」

 やめて。他に良い言い回しなかったのかよ。

 

永久のような一瞬を重ねたい5

 

 家に帰って来た。明かりがついている。

 光一「また空き巣かよ。鍵は閉めたぞ」

 声「これはヤバいやつだな」

 この家で能力は使用したくない。野宿なんてこりごりだ。

 足音をたてないように抜き足差し足忍び足で家を歩く。風呂場からシャーっと音が聞こえる。泥棒がシャワー浴びてんのか? アホすぎるだろう。ドアを開けたらMCMAP(Marine Corps Martial Arts Program)の手刀打ちで気絶させるとしよう。もちろん外国産の技だ。この国にも古武術で似たようなものはあるが洗練されてない上に情報が少ない。マーシャルアーツで得た通りなら軽い力で首もとに手刀を当てれば一撃で気絶なはずだ。当てどころを間違うと気絶ではなく失神するらしい。  大変危険な技だ。真似しちゃいけない。

 カチャ! っと小さな音を立ててドアを開ける。 この一瞬で決める! あれっ?

 光一「あれ?」

 悠愛「パパ?」

 産まれたままの姿で悠愛はシャワーを浴びていた。

 ドアを閉める。ドクンドクン。心臓の音がやけにうるさい。

 悠愛「見た?」

 光一「見てない」

 わけがない。なにこのエッ○ラブコメ的な展開は。

 悠愛「パパなら見てもいいよ? あっやっぱりダメ」

 めんどくさいことになった。

 光一「俺は、ビッチでメンヘラで幼女体型で童顔で貧にゅーに興味はない」

 悠愛「でも悠愛には興味があると」

 シカトしよ。今に向かう俺。てか勝手にシャワー使うなよ。それとシャワー浴びるときはリストバンドしないんだな。そう思った。

 

永久のような一瞬を重ねたい6

 

 恒例の土下座タイムである。

 光一「つきだされたいの」

 悠愛「大胆なんだから~」

 勘違いしてるな。マジでこいつがいると18禁になっちまう。

 光一「警察に」

 悠愛「やめてー! 許してー!」

 光一「どうやって入った?」

 悠愛「博士から合鍵借りたの」

 そういうことか。悠愛は、博士に引き取られて研究所で働いてるらしい。

 光一「貸せ。二度と勝手に入るな」

 悠愛「悠愛とパパの愛鍵がぁ~。それならパパの鍵で悠愛をこじ開けてぇ~」

 光一「こじ開けるもなにもガバガバだろうが」

 また失言を……。

 悠愛「パパさ。元気出てきたね。よかったよ。本当に良かった」

 うっ……。まさか悠愛にも心配かけてたのか俺。

 光一「いや心配かけたな。ごめん」

 悠愛「悠愛こそパパを元気にしてあげられなかったよ。ごめんなさい」

 頭を撫でる。

 光一「いいよ。そんなの」

 悠愛「パパぁ~。結婚してぇ~」

 いや感動的な場面ってこういうのを言うんだろうな。

 光一「今は、目の前の犯罪者を一刻も速く警察につきださないと!」

 悠愛「パパぁ!?」

 似合わないからな俺には。

 

永久のような一瞬を重ねたい7

 

 悠愛を研究所に送り届けて帰路ナウ。夜道は危ないからな。

 声「律儀なもんだぜ。今の生活。悪くないって思ってるんじゃないのか?」

 光一「多少は……」

 最近、欠けたばかりなのに……。

 着信がなった。誰かは検討がつく。

 『美姫だよ。今日はお疲れ様でした。明日は、休み?』

 『休みだよ』

 『何かすることある? ねぇ頼みがあるの』

 『することはないよ。聞くだけ聞くよ』

 『デートして?』

 うむ。よく分からないので考えよう。遊園地での出会いを思い出す。アシスタントと一緒。うむアシスタントが彼氏だったんだな。で相手がいなくなったから俺をターゲットにしたと。舐めてんのか。

 『断る! あんたはアシスタントとデートしてただろうが! アシスタントイコール彼氏がいなくなってすぐに新しい彼氏を作ろうとデートに誘う? 舐めてんのか? 赤髪さんはあんたを守って倒れたんだぞ? あんたを守って傷ついたんだ……』

 『ええっ! 違うよ! 勘違いだよ! 赤髪さんは、彼氏じゃない! わがまま言って遊園地連れていって貰ったんだよ』  

 早とちりしてしまったらしい。

 『ごめん。違うんならそれでいい。でも芸能人だろ? 遊園地とかリスキー過ぎるでしょ。勘違いもするって。理由は聞いてもいい感じ?』

 『最近、ショックなことがあったんだよ。泣き顔に注目とか言われてね……。そんな売れ方はしたくなかったんだよ。だから笑いたかったの』

 芸能人も大変なんだな。

 『そうなんだ。ごめんね。よしっ! じゃあ俺が明日、たくさん笑わせてあげるよ!』

 『本当に? デートしてくれるの?』  

 『任せろ! 男に二言はないよ!』  

 『嬉しい……。ありがとね! じゃあ明日の8時に駅前でいい?』

 8時とか早いな。

 『首都の駅前でいいんだよね?』

 『うん! じゃあ明日!』

 『楽しみにしてなよ? また明日』

 通話をきる。

 デートコースを考えなきゃな。

 今日は早めに寝よう。

 眠りにつく前に声が聞こえた。

 声「気付いてるか?」

 

永久のような一瞬を重ねたい8

 

 駅前に着いた。電話をかけるとしよう。

 『着いたぞ。犬の銅像前にいる』

 『今いく!』

 とことこ不審者が近くに来た。

  美姫「お待たせ!」

 サングラスにマスクで。

  光一「……」

 無視しよう。

 美姫「ちょっとぉ~」

 光一「なんなの? その格好は? 変装にも程があると思うんだけど」

 美姫「見つかったらスキャンダルになっちゃうじゃん」  

 はぁー。ため息がこぼれる。

 光一「少し小声でしゃべって。サングラスじゃなくて普通のメガネでいいからかけて。それだけでバレなくなると思う。それと寒くなってきたからマフラー使って」

 メガネとマフラーを渡す。

 美姫「ありがと」

 美姫が普通のめがねをマフラーを巻いた。俺が事前に用意しておいたものだ。マフラーを少し長いやつを用意した。

 美姫「このマフラー少し長くない?」

 気づいたみたいだ。

 光一「俺にも巻いて」  

 美姫「ええ!?」

 光一「いいから」

 美姫が余ったところを俺に巻き付けてくれる。

 光一「口元を隠してね。それでうつ向いてて。出来るだけ俺にくっついてね。それでバッチリだよ」

 美姫「うん……。デート慣れてるんだね」

 マフラーはいわゆるカップル巻き、恋人巻きというやつだ。美咲は、俺の腕にしがみついた。

 光一「慣れてないよ。ただ姫をエスコートしないといけないから下調べしただけ。てかデート慣れてるのはそっちでしょ? ドラマとかでデートもプロでしょ?」

 美姫「そんなプロ嫌だよ」

 嫌でも達人なはずだ。そのおかげで俺も緊張せずに済む。

  光一「んじゃ電車に乗ろうか?」

 目的地にレッツゴーである。

 

永久のような一瞬を重ねたい9

 

 電車内ではたわいもない話をした。

 美姫「こうくんは、どんな仕事してるの?」

 光一「保育園で保母さんしてる」

 美姫「似合ってる!」

 光一「似合ってないと自分では思うけどね」

 美姫「そんなことないよ。こうくんは優しいしきっと子供達も幸せだと思うな~」

 優しいね。どこが。子供達には楽しみながら成長していってもらいたい。幸せだといいな。でもあいつはきっと幸せじゃない。

 光一「美姫は具体的にどんな仕事してるの?」

 普通に気になる。芸能人っちゃどんな仕事?

 美姫「私ってね。内緒なんだけど生粋の芸能人なの。親が芸能プロダクションの社長だから私は、なんでもするよ。親のパイプのおかげでどの芸能事務所とも仲良し」

 化け物かよ。知らなかった。そんな子が。

 光一「いやめちゃくちゃ忙しいんじゃないの? 遊んでる暇あるの?」

 俺だったら倒れるんじゃね。

 美姫「実はそんなことないんだよ。有名な芸能人ほど休みがしっかりしてるの。有名な芸能人が体調崩したとかあんまり聞かないでしょ? 体調管理も仕事のうちなんだよ。もし私が体調崩したら私の責任じゃなくてマネージャーの責任になっちゃうかな?」

 そうだったのか。なかなか説得力があるな。でも昔のアイドルは、ほとんど寝ないで歌を覚えたりダンスを覚えたり大変だったらしい。

 光一「無理するなよ。今日はたくさん楽しもう!」

 美姫「うん!」

 たわいない。という話ではなかった。

 

永久のような一瞬を重ねたい10

 

 目的地についた。

 美姫「ここって……」

 光一「ギネス級の遊園地だよ!」

 この国が誇るジェットコースターとお化け屋敷がある遊園地にきた。雪がまだふってないおかげでまだアトラクションが動いてくれる。

 光一「遊園地さ。邪魔入って最後まで楽しめなかっただろ? 赤髪さんじゃないけど仕切り直しってやつね」

 美姫「やったぁ! 嬉しい!」

 喜んでくれたみたいだ。

 

永久のような一瞬を重ねたい11

 

 ジェットコースターでは。

 光一「……」

 音速で動き回る俺は退屈だった。おせぇ。

 美姫「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 おい。

 光一「大声出しちゃダメだって!」

 口を手でふさぐ。

 美姫「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

 隣にいるやつのせいでそこまで退屈はしなかった。

 

 お化け屋敷では。

 美姫「ねぇここ。廃校だったらしいよ」

 震えがとまらん。

 光一「知ってる」

 冷静にならんと。所詮子供騙しだ。

 足音が聞こえる。辺りは真っ暗。そのなかを二人であるく。

 美咲「怖いよぉ」

 光一「怖がりだなぁ~。よしここは怪談でもしながら歩こうか」

 美姫「やめてよ~」

 定番ネタで。

 光一「ある病院に余命1ヶ月の命って診断された。女の子がいたんだ。友達二人が来たときちょうどお母さんもいた。お母さんは言った。『写真をとってあげるよ』ってね。写真を撮ったお母さんは、友達二人に写真を送ろうと思ってやめた。次の日、女の子が急変して亡くなったよ。友達二人は泣いたよ。でさ友達二人は思い出したんだ。女の子のお母さんが写真を撮ってくれたことに。すぐに友達二人はお母さんから写真を貰ったよ。写っていたのは。女の子二人とミイラだった」

 美姫「はわわわわわわわ」

 怯えている。掴みは、ばっちりだ。

 光一「話はこれで終わりじゃない。怖くなった友達二人は、霊能者に話を伺いに行った。霊能者は、言ったよ。『残念ですが、あなたの娘さんは地獄に落ちました』ってね」

 締めにわぁ! って驚かせてやろうと思ったら目の前には顔が赤く染まった女性がいた。

 『地獄から帰ってきました』

 光一「うぎゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃ!」

 美姫「にゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃ!」

  

永久のような一瞬を重ねたい12

 

 ジェットコースターとお化け屋敷を終えた俺達は遊園地のベンチに座っていた。

 美姫「ジェットコースター乗ってるとき窒息するかと思ったよ」

 光一「いやばれたらやばいっしょ」

美姫「普通ね。お化け屋敷で怪談しないと思うの。気絶するとこだった」

 光一「にゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃ! って猫ですか? ネコノミクスのなせる技ですか。いや俺もまさかあの場面で驚かされるとは思わなかったよ」

 感想をのべる俺達。

 光一「楽しいでしょ? 俺はめちゃくちゃ楽しいよ」

 美咲「楽しくないはずないじゃない」

 笑いかけると笑ってくれる。素直に幸せだなって思った。

 美咲「手洗い行ってくるね」

 光一「いってらっしゃい」

 美咲はそういって手荒いにいった。

 光一「ふぅー。やっぱ緊張しないとは言えないな。芸能人が隣にとか現実かよ」

 声「気づいてるか」

 声が聞こえた。

 光一「いや気づいてない」

 声「あの子との会話の時の光一は声色が優しい。それとだよとかだねとか誰かさんの真似か」

 気づいていた。気づかないようにしてた。

 光一「俺が誰かに優しくしようとするのは、おかしいか? 真似かも知れない。俺にとっての優しいはあいつなんだよ。忘れられるか」

 声「それが本当の光一なのかもな」

 どういう意味だよ。

 声「それと気づいてないことがもう一つある。それは光一以外の誰も気付かないこと」

 美姫「お待たせ!」

 美姫が帰って来た。さてデートの続きをしよう。

 まだ気づいてないことがある? 検討もつかないんだが……。

 

永久のような一瞬を重ねたい13

 

 夜になった。ロマンチックが足りないのでイルミネーションで有名なところに行ってから駅前に帰って来た。

 光一「にしてもばれないもんだね。いやばれたら俺がこの世とお別れしなきゃならんけど。きっと暴動になってたね」

 美姫「そだね。なんか名残惜しいね。暴動って大袈裟だよ」

 大袈裟じゃないし。フルボッコだドンされるわ。

 光一「美姫が暇なときまた遊べばいいよ。俺はなかなか暇な人間だし。そろそろ行かないと仕事に差し支えるよ?」

 美姫「あっ美姫って呼んだ! ありがと! また遊んでね! デート楽しかった! またね!」

 美姫はそういって立ち去った。さて。

 光一「こういう時は、携帯電話でメールやな」

 するとメールアプリがティンティーンと音を立てて着信した。

 光一「んっ?」

 このメールアプリで連絡なんて普段しないのになんでだ? 何故に着信? 画面をみるとMISAKIという人から。

 『こんばんは! てかさっきまで一緒にいたね! めちゃくちゃのくちゃくちゃに楽しかった! 大好き! 愛してる!』

 っときている。おまけにこのメールアプリ特有のスタンプ機能で遊園地のマスコットキャラが『I LOVE YOU』の看板をぶら下げているスタンプ付きだ。

 光一「あはは……。出遅れちゃったな……。なんていい子なんだよ」

 返信しなくちゃな。

 光一「こんなに人生って楽しかったっけ。最近はナイーブ過ぎたかもしれないな。何が起こるかわかんないんだもんな」

 独り言をこぼした。

 

永久のような一瞬を重ねたい14

 

 今日は二回目のデートの日。てか毎日、朝昼晩に連絡してくるんだもんな。多少は感情移入するってもんだ。ユウトも悠愛も俺は少し変わったという。自覚は無いんだけどな。待ち合わせ場所に早めに来た。待たせるより待ったほうがいいからだ。

 声「リア充になったな」

 光一「んなことない」

 どう変わっても俺はあいつを忘れない。職場にいるし。して貰ったことを忘れるつもりはない。ちなみにピースはいつも通りだ。

 声「光一もそろそろ幸せになるべきだ。今まで優しくしたぶん優しくされとけ。大人しくな」

 光一「ずっと幸せってのは続かない。でもな今は凄く幸せだな。こんな日が続けばいい。ありがちな言葉だけどな」  

 今を大事にしなきゃ。

 光一「永久のような一瞬を重ねたい。こんな感情がいろんな人に伝われば平和なんてすぐなんじゃねぇかな?」

 声「ポエマーかよ」

 ポエマーは、正しくない。詩人は外国語でポエットだったはずだ。

 光一「たまには感傷に浸ってもいいだろ。黄昏時じゃないけどな」

 独り言もたまにはいいかもしれない。落ち着くことができる。俺の場合たまにじゃないけど。あの葉っぱを燃やしている人達はいつも黄昏てるのだろうか。スモーカーは、今時だと罪人呼ばわりだ。肩身はそりゃ狭いだろう。本当に酷いと思った。まぁ煙吹き散らすのは感心しないが。時代が進歩してあの煙が悪い影響を及ぼさなくなったらいいなぁっと思う。女性受け悪いらしいし。それもあるが葉っぱの原価率は約17.7%らしい。ほぼ税金である。税金とは国に納める金のことだ。高すぎるだろう。この理不尽な税率は確実に売れるからと推測できる。なぜ確実かと言うと。コンビニのレイアウトが変わるらしい。今は出入り口の近くにレジがあるがレジが奥に移動するらしい。葉っぱを買う人達は葉っぱだけ買う。寄り道させるためだ。他の物を勝手もらうためらしい。ちなみに売り上げは約4倍に跳ね上がるらしい。いや世のお父さん達は給料制だと思うので買うかは知らんが……。まぁとりあいず多いんだよ。

こんなこと考えるようになったのも最近か。

 美姫「お待たせ! もしかして待った?」

 光一「待ってないよ。行こっか」

 お約束の優しい嘘。そのとき。

 

永久のような一瞬を重ねたい15

 

 「貰っていくぞ」

 鎧で武装された男と思われる人影が美姫をさらった。首もとに一撃もらったのか美姫は気を失っているようだ。分析してる場合じゃねぇ。

 光一「てめぇぇぇぇぇ! 返せよ!」

 叩き潰してやる。切り刻んでやる。怒りで我を失いそうだ。

 

鳩とオリーブの葉、付け加えるとするなら人間か 第19話 メインヒロイン

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本作品の内容はフィクションです。
登場する人物・団体・地名等は架空のものであり、実在する人物・団体等とは一切関係がありません。

また本作品には過激な表現が含まれておりますが、犯罪にあたる行為など実際に行われますと、刑法により厳重に処罰されますので絶対に真似しないでください。

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第19話 メインヒロイン

 

 遊園地に着いた。俺はここが遊園地だったのかわからなかった。

 光一「なんだよ……これ……」

 声「まさかここまでの惨事とはな」

 久しぶりに聞いた声。

 光一「今まで黙ってたくせに……」

 声「オレもショックだったんだよ。それとあんなお前……見ていられなかった」

 光一「そうか……てかお前? 俺を見てんの?」

 声「言葉のあやだな」

 表現上の工夫ねー。

 光一「まぁ……いい。俺は来ちまったんだ。逆らえねぇよ。俺にはさ」

 声「深層心理か。ここはそれに委ねて見るべきだな。最近の光一はらしくなかった」

 らしくない。俺らしさなんか知らねぇけど。

 光一「やってやるさ」

 博士にコールする。

 光一「武器をよこせ」

 それだけ伝えると俺の横にコンテナが降ってきた。コンテナから高速で剣が射出された。それをキャッチする。

 光一「仕事が速すぎるのも考えものだよな。急ぐか」

 すると胸元から。

 「更にその剣はカスタマイズしてあるぞよー! パスワードを述べれば機能が解放されるんじゃが……光一が本当に欲した時に自ずとわかるようになっておる。ありがたく受けとるのじゃ」

 ネックレスには博士との交信機能があったな。忘れてたけどマジでプライベートがないな。

 戦場に向かった。この場における戦場をすべて終わらせるために。

 光一「遊園地。実は好きなんだよな。行ったことねぇけどなんかすごく平和な場所じゃん? テレビじゃ家族で遊びに行ったりカップルで遊びに行ったり友達と遊びに行ったりするんだろ? それがこんな……許せるわけがねぇだろ!」

 声「相手がいない光一。かわいそー」

 光一「うるせぇわ!」

 俺だって行きたいんだよ。

 

メインヒロイン2

 

 高く跳躍しつつ現状を確かめる。そこかしこで。

 光一「バトル勃発だな」

 声「ナウだな」

 空気読めよ。

 それにしても能力者が一般人を庇う感じでどこも戦闘している。当然だが遊園地に来る人は、いい人ばかりなんだな。一人で孤立してる戦場がない。手を取り合っている。

 光一「いるか? 俺さん」

 声「そんな呑気な事言ってると全滅するぞ」

 光一「この遊園地は9割がリピーターらしい。また来たいってそう思うほど楽しいんだ。まぁ色彩心理学使ってたりわざと広く感じられるように作ってあったりエリアBGMでテンション上げようとしてきたりトイレに鏡がなかったりいろいろあざといけどよぉ」

 声「めっちゃ行きたかったんだな。それとトイレに鏡がないのは夢見心地の気分になっていても、自分の顔を鏡で見たとき、現実に引き戻されてしまう、というのを防ぐためにあると言われている」

 光一「いったそばから悠長だな」

 空から見渡す。すると男二人の背に女性と子供という戦場が見えた。明らかに多勢に無勢だ。このままだと。

 光一「女性が泣いてる……。子供が泣いてる! まずはここからだな 」

 声「いくぞ」

 光一「撃滅する!」

 剣を地上に向かって投げる。投げた反動で真下に体も引き寄せられた。

 

メインヒロイン3

 

「気づいたらここにいた」

 何でだろう。いやわかっている。

 「戦っていた。俺には関係ないのに」

 関係ない。それこそ関係がない! ないなら作ればいい。

 「助けてってさ。聞こえたんだ。気のせいかもしれないけどな。ただ……変われない。変わりたくないって思ったんだ……」

 昔からそうなんだよ。聞こえた気がするんだよ。何とかしたいって思うんだ。私は私のままでいるべきだしあなたはあなたのままでいるべきです。あいつのためなら変われるって思う。やっぱ変えれないこともある。俺はやっぱり俺でいたい。

 「救いを求める声を誰が無視出来るって言うんだよ! 知らねぇ……知らねぇよ! 俺だけは、無視できない! 」

 剣を振り回し敵を蹴散らす。まずは安全の確保だ。あらかた吹き飛ばした俺は男二人の側に向かおうとした。えっ?

 光一「なんでテロリストがここにいる!」

 ジャックがいた。

 ジャック「名乗ったろうが。名前で呼べよ? それともう敵じゃないぞ? 俺は博士の傭兵だ。雇われてんだよ」

 光一「はっ? 雇われてる?」

 ジャック「不思議に思うのもまぁ当然の話だが。今は目の前の敵に集中しろ。それとなさっきのお前。最高にクールだったぜ?」

 共闘ということか? 道理で初対面の時の殺気を感じなかったわけだ。だが俺も物わかりがそれほどいいほうじゃない。

 光一「戦いが終わったら話を聞かせてもらう。あージャックの隣のお父さんは手を出さないで下さい。全ての敵は自分が蹴散らしますんで」

 さて。敵さんを蹴散らしますか。敵は多い。だが俺の力なら余裕だろう。

 ジャック「加勢するぜ」

 光一「いやあんたはキャパを回復しておくべきだ。この能力のキャパは能力を使っていなければ回復する」

 そうキャパは回復する。使い続けるか一気に使うかでそりゃもうヘロヘロになるが体力と同じでインターバルを設ければまた使える。

 ジャック「ここは任せていいんだな?」

 光一「活路は作るさ」

 そして俺は音速で駆け抜け敵を切り刻んだ。ほとんど風圧で飛んでいくので実際に斬れたのは数えるほどだが。そして戻ってくる。

 光一「今のうちに」

 ジャック「もう人間の動きじゃないな」

 光一「あんたほどじゃない。音速の剣をかわすほどだからな」

 動体視力が並外れてきた俺だが音速で動けても音速の攻撃を避けれるわけではない。

 光一「あんたに負けて思い知ったよ。素直に尊敬してる」

 ジャック「俺を下したくせに負けたと言うか。名前を聞いていいか?」

 俺は倒してない。倒したのは博士だろうに。 

 光一「光一だ。キャパ回復のついでにその家族を逃がしてくれないか? 頼まれてくれ」

 ジャック「承知した」

 ジャックは、引き受けてくれた。さてお掃除を再開しよう。

 

メインヒロイン4

 

 俺は、ひたすらに敵を蹴散らして回った。その際に。救世主やら英雄やら助けて人達から言われた気がする。けどあんまり聞いてなかったりする。

 光一「結局さ。俺は憂さ晴らしをしたかったのかもしれないな」

 声「八つ当たりでも善行ならいいじゃないか」

 明確な敵がいてよかった。自分の物も他人の物も壊したくない俺は、わかりやすい悪に頼るしかなかった。

 光一「自己嫌悪だ」

 声「人間だからな。そんなときもある」

 

メインヒロイン5

 

 敵も残すところ一大隊となった。俺の後ろには、うつ向いて顔が見えない女の子と倒れて動かなくなった赤い髪の男がいる。女の子は、俺が来たときから泣いている。

 「赤髪さんはね……私のアシスタントなの……」

 女の子が語りだした

 赤い髪で名前も赤髪……突っ込むのはよそう。

 光一「うん」

 聞く側に徹する。

 「赤髪さんはね……マネージャーに怒られてばかりだった……でもすごく優しかったの……」

 光一「うん」

 アシスタントやらマネージャーやら普段聞きなれない言葉だな。

 「でもトラウマのせいで人前でご飯が食べない人だったの……私も一緒に食べたことない……」

 光一「トラウマ……?」

 聞いていいのかな。

 「ある時ね。赤髪さんが教えてくれたの。みんなとご飯を食べないんじゃなくて食べれないんだよって」

 光一「どうして?」

 わからない。

 「赤髪さんは捨て子で施設に預けられたらしいの。そこは施設なんて名ばかりの地獄だった。そこでは子供同士喧嘩させてた。大人達がね。そして負けた子供は、ご飯を食べれない。勝った子供は負けた子供の前でご飯を食べる」

 光一「くっ……」

 気づけば奥歯が砕けそうなほどあごに力が入っている。捨て子……その末路がこれ……なのか……。

 「大人達は子供達で賭けをしていた。だから誰も助けにこない。負けた子は、ご飯を食べれないことに加え、大人から暴行される。喧嘩は女の子も強制参加だった。意味はわかるよね……? 赤髪さんは、負けた子からの視線が忘れられなくて今でも人前でご飯が食べれなかった」

  なんてふざけた話だ。施設は今もあるのだろうか。なぜそのようなことが許されるのだろうか。  

 「赤髪さんは……トラウマを克服することなく……私を庇って……」

 このままだと女の子もショックでPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症してしまうかもしれない。

 光一「仇は討つよ。見てて。力あるものはなきものを助けなきゃね」

 弱肉強食の世界じゃそうはいかないけどな……。皮肉は、やめておこう。俺には今、守るべきものがある。指一本触れさせない。

 

メインヒロイン6

 

 敵を片付けた俺は女の子の元に戻ってきた。

 光一「大丈夫?」

 「私は大丈夫……でも……」

 しかし女の子しかいなかった。戦闘の余波か何かで身動きの取れない男は……。不条理だと思った。頑張ったら報われるとか苦しんだ分、幸せが返ってくるとかそんなことは人生ではかなり確率が低い奇跡の部類だ。人生はそんなに甘くない。

 光一「俺の言えることはそんな多くないよ。その赤髪さんのことはわからない。でもさ赤髪さんは最後に女の子を守って逝ったんだよ。男冥利に尽きるだろ」

 「最後とか……。逝ったとか言わないで!」

 酷だけど。

 光一「現実を受け止めろ! 俺だって最近辛いことがあったよ! 最後だって言われた! そりゃ俺だって嫌だよ! でもさ前向かないとどうする? 顔を上げないとダメなんだよ。じゃないと自分が嫌になる。壊れていくんだよ……」

 ブーメランだ。言った言葉がそのまま帰ってくる。

 「えっ……えっ……」

 女の子が顔を上げてくれた。見たことある顔のような。嫌まったく心当たりがない。なぜならパンダみたいだからだ。

 光一「ぶっ! あはははははははは! パンダ! パンダがおる!」

 堪えられなかった。こんなん無理です。

 「ちょ! 笑わないで!」

 これを笑わないやつはどうかしてるだろ。泣いてる女の子が顔上げたらパンダ顔。

 光一「鏡持ってない?」

 笑いを堪えて言った。もう盛大に吹いたが。

 女の子は、カバンから鏡を取り出して自分の顔を見た。

 「化粧が崩れてるぅ~!」

 そりゃあんだけ泣いてればな。化粧してない女の子なら……こんなことには……思い出すのはよそう。

 光一「笑った理由がわかったでしょ?」

 「うん……」

 しょんぼりするパンダ。かわいい。

 光一「かわいい」

 「口説かれた!?」

 やべっ! 心の声が!

 光一「違う! 俺はパンダなんか口説かない!」

 「失礼だよ!」

 光一「とりあメイク直しなよ!」

  「パンダとか言われるから直す」

 ったく。でもパンダはかわいい。絶滅危惧種なんだ。可愛がるのは当然のことだ。てかこのパンダは、声がキレイだ。素人でもわかるくらいに。

  女の子は、俺に背を向けてメイクしている。変身ナウ。

 光一「絶滅危惧種さん? 聞いてもいい? さっきアシスタントやらマネージャーとか言ってたよね? 芸能人さんなの?」

 なわけねぇか。

 女の子が振り向きながら言う。

 

 「私は、美姫! アイドルだし声優だし歌手だし俳優! ともかく芸能人! 付け加えてあなたのメインヒロインだよ!」

 

 光一「!?」

 びっくりしすぎて声が出ないぜ。

 

鳩とオリーブの葉、付け加えるとするなら人間か 第18話 かっこいい男とは?

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本作品の内容はフィクションです。
登場する人物・団体・地名等は架空のものであり、実在する人物・団体等とは一切関係がありません。

また本作品には過激な表現が含まれておりますが、犯罪にあたる行為など実際に行われますと、刑法により厳重に処罰されますので絶対に真似しないでください。

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第18話 かっこいい男とは?

 

 僕は、咲希にフラれてから必死に理由を探した。

 『私はきっと誰も好きにならない。誰とも付き合わないの』

 そんな人間が果たしているのだろうか?

 いやいるわけがない。

 僕はそう思う。咲希は、友達が多い。誰にでも優しい。いつも笑顔を振り撒いている。確かにそういう女の子は、モテるだろう。だが女からは嫌われるだろう。

 よくある話だ。ドラマでもアニメでも友達の想い人が自分に告白してくる。自分は、興味がないのでそりゃもう素っ気なく告白を無下にする。そして友達が気づく。いじめの始まりだ。

 それが咲希にはなかった。何故かと言うと完璧過ぎたのだ。

 咲希は、勉強が出来た。スポーツが出来た。友達の困ったことは、ほとんど解決できた。しかもお世話な性格で友達でもない人が困っているのを嗅ぎ付けては、解決していった。仲間が多すぎた。

 そんなパーフェクトウーマンに恋に落ちないほうがおかしい。僕が咲希に告白したのは、昨日だ。中学二年生の春である。青春がしたかったのだ。初恋の相手と。

 『僕と付き合ってほしい。咲希ねぇのことをもうただの幼なじみに見れない』

 僕は、それなりに勉強もスポーツも出来る。顔もそれなりだ。中学生ってのは、思春期と反抗期が重なるので複雑だ。だからなぜか強気にもなったりする。

 『優人は、弟みたいなものだよ。それ以下でも以上でもないの』

 だからフラレるなんて思わなかった。

 

かっこいい男とは?2

 

 高校生になった。咲希は、一つ上の学年にいる。僕は、モテると言われるサッカー部に入部した。それはもうモテたさ。いくら女の子をとっかえひっかえしたって誰も文句は、言わなかった。

 いや一人だけ言ったな。

 『楽しい? ならいいけど。一言だけ言わせて。カッコ悪い』

 そう咲希は、言った。

 僕のどこがカッコ悪いというんだ?

 わからない。最高にカッコいいじゃないか。

 カッコ悪いと思うのは、咲希だけだ。そう自分に言い聞かせた。

 

かっこいい男とは?3

 

 大学生になった。僕の人生は、充実している。このままエリート街道を辿るのも悪くない。そう思っていたら天から光が降り注いだ。僕は、その光に包み込まれた。

 『なんて心地いいんだ。僕は神にさえ愛されているのか』 

 次の瞬間、僕には人間とは、思えないほどの超パワーが扱えるようになった。

 先日、大学で一番可愛いと評判の女の子を彼女にしたところだ。その女の子は、僕から手を出さずとも告白してくれた。付き合ってた女の子には。

 『他に好きな子が出来たから別れて』

 と言った。ビンタしてこようとしたが。遅すぎたのでかわした。

 『すぐ暴力に訴えようとしてくる女って本当に女かよ。本当の暴力を教えてやろうか?』

 脅したら泣いてどこかにいった。

 全部思い通りになる。そんな俺のどこがカッコ悪いんだ? わからない。

そんな僕の目の前にやつは、現れた。

 

かっこいい男とは?4

 

 『ちょっとそこのお前。なに咲希の横歩いてんの?』 

 どうして咲希と歩いてる。気にくわない。

  『優人じゃん! 久しぶり!』

 黙ってろ。

 『咲希さ? 誰とも付き合わないんじゃなかったの? 俺を振る口実だったわけ?』

 俺とは、付き合わず。他の男と付き合う? バカにするなよ。

 『……』

 黙りやがった。女は黙れば許されると思ってやがる。

 『ユウトだっけ? 咲希さんめっちゃ困った顔してるぜ? 女の子困らせるの良くないんじゃないのか? 隣にいる女の子暇してるぜ?』

  なんだこいつ? 明らかに舐めてるな。男としての格の違いをここで見せておくか。

 『こいつは遊びだよ』

 大学で一番の女を遊びだという僕は最高にカッコいいな。

 『ひどい!優人!ねぇ冗談だよね?』

 お前にもう用はない。

 『なわけないだろ? 消えろブス』

  邪魔だな。

 『あっ……ひぐっ……あああああああ』

 また泣けば許されると思ってる。自分が被害者。そう思えばどんなことでも楽になる。

 『お前さユウトって言ったな? 字で書くと優しいに人か?』

 バカなのか? こいつ。

 『そうだよ? 優しいに人で優人』

 優しく教えてやらないとな。バカを見ると虫酸が走るんだけどな。

 『お前さ完全に名前負けしてるぜ。くずやろう』

 なんだと? 

 『ケンカ売ってるの? 買うよ?』

 僕に勝てると思ってるの? 天からの力がなくても余裕だね。

 『売ってるに決まってるだろうが!』

 威勢がいいな。叩き落としてやりたい。土下座でもさせて靴でも舐めさせるか。

 『こうちゃんだめ!ユウトは運動神経抜群でしかも頭もいいし金もちだし……勝てないよぉ』

 ちゃん付け? 腹が立つな。

 『男のケンカに女が口挟んだらダメなんだぜ。知らなかったのか?』

 わかってるじゃないか。

 『橋の下っていったらわかるな? 18時だ。逃げるなよ』

 『話がわかるようで結構だ』

 どんなにカッコつけようと僕の前では、無力だよ。僕が眩しすぎてお前の存在なんかすぐ霞む。

 

かっこいい男とは?5

 

 はずだった。僕なんてかっこよくなかった。僕は、僕以外をカッコいいと思ったことがなかった。それなのに目の前で僕を倒した男をカッコいいなどと思ってしまうなんて。僕は、他人を真の意味で認めたことなんてなかったのだろう。でも今は違う。

 『弟子にしてください! 先輩!』

 カッコいい男になりたい。そのためについていこうと思った。この人に。

 これが僕と先輩の出会いだった。

 

かっこいい男とは?6

 

 ずぶ濡れのまま家に帰ってきた……。

 光一「明日も仕事か……。最悪だな……。初めて保育園に行きたくないっておもったんじゃないのかな……俺……」

 誰も答えてはくれない。ピースも寝ているようだ。

 光一「ははっ……はははははは……」

 何故か笑えてくる……。可笑しくなってしまったみたいだ……。

 光一「どんな顔して会えばいいんだよ……」

 もう寝よう。考えても答えなんて出ない。

 光一「会わす顔なんてないのにな……。仕事は、いかなきゃ……」

 

かっこいい男とは?7

 

 保育園についた俺は、驚愕した。

 下駄箱に何かある。オシャレな袋だ。

 そして思い出す。

 光一「ユウトに買ったプレゼント……。どこにやったっけ……」

 せっかく買ったのに。あいつと。

 オシャレな袋の中身を見る。

 中にはプリンと保冷剤と手紙。なにか書いてある。

 『ごめんなさい。こうちゃんの言葉は、本当に嬉しかったです。こんな私を好きになってくれてありがとうございます。でも私は、こうちゃんの好意を受け取れません。どうかそんな私を許してください。そしてこれからも仲良くしてください。こうちゃんと仲良く出来ないなんて嫌なんです。私は私のままでいるべきだしあなたはあなたのままでいるべきです。だから私を諦めてください。こんなことを書くべきではないのかもしれません。だってこうちゃんが悲しむと思うから。それでも書くのは友達でいたいから。元気を出してください。笑顔のこうちゃんが一番好きな咲希より。

追伸 プリン食べて元気出してね!』

 見なければよかった……読まなければよかった……。

 光一「あぁ……うっ!」

 涙が流れてきた。なんで枯れてくれないだよ! 吐き気までする……。

 気づけば走っていた。逃げるように。

 

かっこいい男とは?8

 

 家についた俺は保育園に電話をかけた。

 光一「もしもし神城です。体調が悪いので休みます。勝手をいってすみません」

 園長「ゆっくり休みなさい」

 光一「はい」

 罪悪感が込み上げる。最低だ。

 オシャレな袋は、あいつの下駄箱に置いてきた。受けとるわけにはいかなかった。

 

かっこいい男とは?9

 

 俺の携帯が着信音を鳴らしている。うるさい。寝かせてくれよ。時計を見るともう夜になっている。

 光一「誰だよ」

 携帯を見るとユウトからの着信だった。

 光一「もしもし。なんだ?」

 ユウト「今ですね。先輩の家の前にいます」

 光一「ストーカーかよ」

 ユウト「上がってよろしいでしょうか?」

 光一「好きにしろ」

 会いたくなんかないけどな。断るのは気が引けた。なんとなく。

 

かっこいい男とは?10

 

 光一「悠愛もいたのかよ」

 家に上がってきたのはユウトと悠愛だった。二人を居間に座らせお茶を出した。

 悠愛「ゆぅあがぁ~パパの家にくる理由は一つ! それはパパとひとつに」

 睨む。

 悠愛「今日のパパ……怖いよ……」

 怖くないさ。ただ泣き袋が腫れているだけだ。目も充血してるだろう。鏡は見たくない。

 光一「自分のことゆぅあとか可愛く呼ぶなよ。まぁおっさん相手になら可愛く聞こえるか……」

 言葉に毒が混ざる。

 光一「ごめん。調子が悪いんだ」

 嘘じゃない。雨に打たれ過ぎたのか風邪気味だ。

 ユウト「すいません! でもお礼がいいたくて!」

 お礼?

 光一「俺がなにかしたか?」

 ユウト「これですよ! プレゼント! 咲希ねぇと買ってきてくれたんですよね! ありがとうございます!」

 ユウトが持っているのは紛れもない俺とあいつが買ったプレゼントだ。

 光一「どうして……それを……」

 ユウト「咲希ねぇが渡してくれましたよ? 先輩は直接渡すの恥ずかしいからって」

 それは嘘だ。嘘をつかせたのか……。俺が……。

 ユウト「スリッパとブランケットとハンカチと香水とか凄いオシャレです! 八回戦って! 笑っちゃいましたね! やっぱり先輩は最高ですよ!」

 言葉が痛い。突き刺さるんだよ。言葉も眼差しも……。やめてくれよ……。

 光一「帰ってくれ」

 ユウト「えっ」

 悠愛「パパ……」

 光一「まともに座ってもいられないんだ。ごめんな」

 

かっこいい男とは?11

 

 二人は帰って行った。

 光一「こんな自分は嫌だ。嫌いだ」

 明日はしっかり仕事に行こう。じゃなきゃ壊れる。

 

かっこいい男とは?12

 

 「おはよう……こうちゃん……来てくれたんだね……」

 保育園で会ったあいつは、普通に……挨拶してきた。

 全然普通じゃない。元気ない…。でも俺は。

 光一「……」

 無言で通りすぎるしかなかった。 手紙があれだからな。だんだん字が汚くなっていた。途中で泣いたんだろうか。最初から泣きながら書いたのだろうか。でもそれは俺の想像でしかない。

 

 それから何日たった? わからない。

 

 「おはよう……今日はなにして遊ぼうか?」

 無視する。

 

 「ばいばい……。今日は話してくれなかったね……」

 無視する。

 

 「おはよう……今日はピアノ引くよ……」

 無視する。

 

 「ばいばい……ダメだよ……園児達が心配してる」

 無視する。

 

 「おはよう……今日はプリン食べれるよ! 私のは食べてくれなかったね……」

 無視する。

 

『咲希が光一お兄ちゃんに告白してフラれて泣いてるの。滑稽でしょ?』

 しゅんくんの似顔絵を思い出した。逆になったな。滑稽だろ?

 

 「ばいばい……もうプリン食べても笑顔になってくれないんだね……私のせいで……」

 無視……

 光一「違う……」

  それだけは譲れない。 

 光一「自業自得だから……俺のさ」

 

かっこいい男とは?12

 

 家に帰って寝る前にテレビをつけた。アイドルの美姫がバラエティー番組に出ている。

 『皆さん今日も笑ってくれましたか? 来週も笑わせますよ? ゲストの美姫ちゃん! ありがとねぇ!』

 司会が番組の締めくくりをしている。

 『ちょちょちょぉー! ちょっと待ってください! ドラマの告知しまーす! 最終回間近なんですけどね~! このチャンネルで21時だよ! 観てね!』

 告知もしっかりね。よくやる。

 『泣き顔に注目かな?』

 司会が言う。

 『最近ですねー。上手くなったって言われるんです。いいことなのかわるいことなのか』

 俺に対する追い討ちかよ……。知らねぇよ。

 寝るか。

 着信音が鳴っている。俺の携帯だ。またユウトか? 

 博士だ。何かあったに違いない。嫌な予感がする。

 光一「何があった」

 単刀直入に聞く。

 博士「となり街の遊園地が襲われておる! 一般人の能力者が応戦しておるが勝ち目がない! 劣勢じゃ! このままだと」

 光一「俺には関係ない」

 ブツ。電話を一方的にきった。寝るとしよう。

 

かっこいい男とは?13

 

  ここは遊園地。だった場所だ。今では戦地と化している。

 「諦められるか! 後ろには俺の女房と子供がいるんだ」

 男は、目の前にいる騎士のように見えるものとピエロに見えるものの大群を目にして言った。隣には、ジャックと名乗った男がいる。

 「情熱家より、冷淡な男のほうが簡単に女に夢中になるものだがな……男が炎のように燃えさからなくてどうする。降りかかる火の粉を己の炎にて飲み込んでしまえ!」

 ジャックは、情熱家だとは思うがいい男だと妻と子供を持つ男は思った。

 だが劣勢に変わりはない。遊園地が謎の襲撃を受けてから随分と時間がたった。観覧車のあった場所など火の海だ。爆発したのだろう。たとえこの肉体強化的な能力があったとしても自分より強い相手が大勢いた場合には、役をなさなかった。

 「戦地では幾度となくもう終わりだ……などと思ったが今回は本格的に終わりかもしれない」

 ジャックすら弱音を吐く。こんな屈強な男ですら。

 今でもこの遊園他内では人間であり人間を越えた力を持つもの達が奮闘しているだろう。

 愛する友、妻、子供を守ろうと必死なはずだ。だが……相手が悪い。

 男は後ろで震えている妻、子供に向かって言った。

 「必ずお前達を守って見せる」

 満身創痍ながら男の目は、輝いていた。

  無情にも敵が近づいてきている。希望を絶望に変質するのも時間の問題かもしれない。

 

かっこいい男とは?14

 

 だが。状況に変化が訪れた。敵の大群が弾けた。

 「なんだ? 何が起こった?」

 男はそういった。

 「遅いじゃないか。それでこそ男だ」

 ジャックは、悟ったように言った。

 大群が弾けた爆心地は、煙に包まれている。爆煙から声が聞こえる。

 「気づいたらここにいた」

 二人には雑音などもう聞こえない。

 「戦っていた。俺には関係ないのに」

 ただ一人だけの声がこだまする。

 「助けてってさ。聞こえたんだ。気のせいかもしれないけどな。ただ……変われない。変わりたくないって思ったんだ……」

 声は若い。だがどこか達視したような声。どこか優しい声。

 「救いを求める声を誰が無視出来るって言うんだよ! 知らねぇ……知らねぇよ! 俺だけは、無視できない! 」

 煙は晴れた。爆心地には青年が立っていた。色素の抜けた金髪にネックレスとピアスが印象的な青年。どこにでもいる若者だ。

 

 だがその眼光、眼差し、顔つき、様々な要素から普通ではないことがわかる。

 

 「あはははは! 最高にカッコいいぞ! 青年! 実に俺好みの展開じゃないか!」

 ジャックは言った。

 「カッコいい男。英雄は遅れてくるもんなのか? 笑えるな。もっと速くこいよな。待ちくたびれたぜ」

 青年は、答える。

 「待っててくれなんて頼んでないぜ? ただ無視できなかっただけだ」

 

 

 

鳩とオリーブの葉、付け加えるとするなら人間か 第17話 誰にも届かない

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本作品の内容はフィクションです。
登場する人物・団体・地名等は架空のものであり、実在する人物・団体等とは一切関係がありません。

また本作品には過激な表現が含まれておりますが、犯罪にあたる行為など実際に行われますと、刑法により厳重に処罰されますので絶対に真似しないでください。

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第17話 誰にも届かない

 

 もう後戻りの出来ないところに行くよ。

 光一「良いこと言ったって顔も、笑った顔も、泣いた顔も、怒った顔も、俺のことなのに自分のことのように手伝ってくれるその性格も恥ずかしそうにしてるその仕草もさ俺は、大好きだ」

 ごめん。ずっと友達なんて無理だよ。

 光一「付き合ってほしい。咲希じゃなきゃダメなんだ」

 咲希は、うつむいている。顔が見えない。でも涙が流れているのはわかる。

 ポタ。

 ポタリ。

 どうして。

 嬉しいのか?

 悲しいのか?

 俺にはわからない。

 それでも俺は、俺には言えないと思っていたことを言ったんだ。答えを権利があるんじゃないか?

 幸せな時間がずっと続けばいい。願うなら咲希 の隣でさ。

 光一「なんで泣いてるんだよ。泣くことないだろ」

 不思議でならない。

 先の小さい拳が震えてる。いや全身が震えている。

 どうした?

 なんで?

 寒いの?

 光一「寒いのか? どうして震えてるんだよ……」

 俺の発言がこんな状況を作り出したのか? 当たり前だ。俺のせいだ。また女の子を泣かせた。どうしろっていうんだ!

 光一「ごめん。俺の発言が咲希を泣かせたんだと思う。でも撤回は出来ないよ。冗談でこんなことは言ったりしない。本気だ」

 俺は……。

 光一「本気で咲希のことが好きなんだよ」

 気づくと俺も泣いている。どうして。まだ答えを聞いていないのに。聞きたい? 聞きたくない? もうわかんなくなってきたよ。

 永遠とも思える時のなか咲希が顔を上げた。

その顔にうつっていたのは。そして咲希の唇が動く。ゆっくりと。俺の好きな声で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 咲希「ごめん……ごめん……ごめんね! 私はこうちゃんとは付き合えない…付き合えないんだよぉ!」

 涙のこぼれる速度が増す。

 俺の好きな顔で、好きな声で、目の前の女の子は、俺を拒絶した。ずっと続いてほしいと願っていた。世の中の平和なんかどうでもいい。ただ咲希がいる。いてほしい人がいる。そんな平和は、瓦解した。音を立てて崩れ去った。俺の表現力じゃこの絶望は、表せない。ただ俺は……。

 光一「あぁ……ぁぁ……」

 声にならないの叫びを上げた。こういう時、涙は止まってくれない。

 

 光一「どうして……どうして俺じゃダメなんだよ! 嫌だと思うところは直す! だから…」

 

 咲希「そうじゃないよ…」

 

 光一「なんで……俺は、咲希じゃないとダメなのに!」

 

 咲希「女の子なんて星の数ほどいるんだよ? 私じゃなくていい」

 

 光一「ならなんで泣いているんだよ! そんなに俺が咲希のこと好きだっていうことが嫌なのかよ!」

 

 咲希「痛いところつくんだね。ダメだよ。言っちゃだめなの」

 

 光一「なんでダメなんだよ! 言わなくちゃ伝わらないことばっかなんだよ! だから言った……伝えたかったから俺は、大好きだっていった!」

 

 咲希「やめてよ……言ったって伝わらないことだってあるの!」

 

 光一「俺の言った意味がわからないのか? 何度だって言ってやる! 好きだ!」

 

 咲希「何度も言っちゃダメだよ……わかってる……こうちゃんが私を好きになってくれたの……わかるよ……でも!」

 

 光一「でも! なんだよ! 聞かせてくれよ!」

 

 咲希「でも……でも! うっ……うぁぁぁぁ!」

 

 光一「泣いてるだけじゃわかんねぇんだよ! 頼むからわかるように言ってくれよぉ……バカみたいじゃないか……」

 

 咲希「わたしは…わたしは…」

 

 光一「お願いだよ……知らないよりはずっといい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

咲希「こうちゃんが好き! 好きなの! 誰よりも好き! 他の男の子なんか好きになったことなんてない……ただ一人……あなただけを愛している……こうちゃんしかいない……こうちゃんだけを見つめていたい……子供が好きなこうちゃんが好き……優しいこうちゃんが好き……笑わせようと必死なこうちゃんが好き……努力家なこうちゃんが好き……こんなに好きになっちゃったら他の誰を好きになれるっていうの!? なれるわけなんてない……この気持ちを誰かに向けるなんて死んだほうがまし……」

 

 光一「何を…なにを言ってるんだよ……わけがわからないよ」

 

 咲希「私は、こうちゃんのことが好きっていっているの! ちゃんと聞いてよ……」

 

 光一「好きって……? 付き合えないって……? 状況が理解出来るやつがいるわけねぇ……だろ」

 

 咲希「好き……でも大好きじゃないから付き合えない」

 

 光一「意味がわからない! 俺しかいないんじゃないのかよ!」

 

 咲希「そうだよ……こうちゃんしかいないんだよ……すっごく優しいこうちゃんが好き」

 

 光一「俺の……俺のどこが優しいっていうんだ! こんな身勝手言ってしまう俺のどこが!」

 ゆっくり咲希が近づいてくる。

 

 咲希「知ってるんだよ。学生の時、子猫にご飯食べさせてるこうちゃんも、子猫の捨てられているのみて傘を走って買いにいったこうちゃんも、カラスが害獣だって知って涙したこうちゃんも、優しくないわけがないでしょ!」

 咲希が更に近づいてくる。

 

 光一「どう……して……」

 もう少し動けば触れてしまう。

 

 咲希「誠実なところも好き……」

 

 光一「やめろ……ダメだ……よくない……咲希は、俺をフッたんだろ……」

 

 咲希「好きなの……相思相愛なんだよ……? 止められないの……止めて……」

 

 光一「止められる……わけが……ない」

 そして唇と唇が……。

 

 咲希「こんなキスは初めて……人生で一番いいはずなのに……悲しい」

 

 光一「うっ…ぁぁ…」

 

 咲希「泣いているこうちゃんも可愛い……私ね……これがファーストキスじゃないんだよ……? 幻滅した……でしょ……」

 

 光一「なんでぇ……最低だぁ……こんなの望んじゃいない……」

 

 咲希「私はどんな人とでもキス出来るよ……こうちゃんみたいな……いい人じゃないよ……でもこれがこうちゃんとの最初で最後のキス……」

 

 光一「嫌だ……嫌だよ……許容出来るもんかぁ……」

 

 咲希「今のは私のミス……こうちゃんと私は、友達なんだから……ダメだよ……私にはやらなきゃいけないことがあるの……」

 

 光一「友達……? ならそのやらなきゃいけないことも言え……うぷ!?」

 口を塞がれる。唇で。

 

 咲希「ダメ……ダメなの!」

 

 光一「友達同士で言えないことがあるって……? それって本当の友達なのかよ!」

 

 咲希「あるよ……」

 

 光一「言いたいこと全部言えるのが友達じゃないのかよ! 咲希の友達の価値観おかしいよ!」

 

 咲希「こうちゃん」

 

 光一「なんだよ」

 

 咲希「最近友達が増えたからって知ったかぶりしないで! 」

 

 光一「あっ……」

 

 咲希「ごめん……最低だからね……これがこうちゃんの知らなかった私なんだよ……」

 

 光一「お前なんか……友達じゃない……! もう咲希なんて呼ばない! 下の名前で呼びあったもう他人じゃなくなるんじゃ……ないのかよ……? 唇が触れあっても今のお前は遠いよ!」

 

 咲希「私のことは嫌いになればいいよ……」

 

 光一「なれるわけないだろ……」

 

 咲希「なってほしく……ない……」

 

 光一「情緒不安定かよぉ……」

 

 咲希「かもね……私は、もういくよ……ばいばい」

 

 そういえば梅雨入りしたんだっけか……。

 寒い……。大粒の雨が俺を押し潰そうとしている……。優しい……だって……? 俺とあいつのどこが……? 欲しいものが必ず手に入るなんて思ってなかった……。物じゃないけどさ……。絶対にそんなことはないけど……。俺は、欲しかった。愛されたかった……。好き人に……。

 

 光一「ずぶ濡れだ……。寒い……。身も心も……。もう涙なのか雨なのかわからないな……。こういう時、お前は、声をかけてくれないんだな……」

 

 いつもの謎の声が聞こえない……。

 

 光一「罵ってくれたほうが助かるんだぜ……? 惨めだ……愚かだ……お前は、結局独りなんだぞ……とかさ……。」

 

 嫌だった。

 

 光一「独りは、嫌なんだよ……。独りにしないで……」

 

 俺の言葉は、誰にも届かなかった。独り言なのだから。

鳩とオリーブの葉、付け加えるとするなら人間か 第16話 プレゼントをあげる。もう後戻りは出来ないんだ

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本作品の内容はフィクションです。
登場する人物・団体・地名等は架空のものであり、実在する人物・団体等とは一切関係がありません。

また本作品には過激な表現が含まれておりますが、犯罪にあたる行為など実際に行われますと、刑法により厳重に処罰されますので絶対に真似しないでください。

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第16話 プレゼントをあげる。もう後戻りは出来ないんだ

 

 光一「オラオラ! どうしたぁ!」

 悠愛「パパがいじめてくるぅー! もっといじめてぇー!」

 ユウト「僕はカッコいい男になるんだ! そのために先輩を越える!」

 仕事が終わって今は悠愛とユウトを鍛えていた。異形種の行動が活発化している。知り合いがボコられるのは嫌だからな。こうして戦えるようにしてるわけだ。

 大剣を振り回しながらユウトに語る。

 光一「落ち着け、そしてよく狙え。お前はこれから一人の男を倒すんだろ?」

 ユウト「はい!」

 光一「苦しいこともあるかもしれない。
云い度いこともあるかもしれない。
不満なこともあるかもしれない。
腹の立つこともあるさ。
泣きごということもあるさ。

これらをじつとこらえてゆくのが男の修行なんだよ!」

 大剣の風圧でユウトと悠愛を吹き飛ばす。二人には能力を切らすなと言ってある。模擬戦でも能力の加護無しでこの大剣を食らうとそりゃもう惨劇だ。全長6メートル超で博士の研究により以前より重さも増している。

 光一「男は生涯において、一事を成せばいいんだ! 守る対象を見つけろ! そして守り通せ! なんでもいい。だがな! 男なら女を守ってみせろ! ユウト! 隣に悠愛がいるだろ! 俺から守ってみせろよ!」

 ユウト「はい! 独りの先輩に負けるわけには、いきません!」

 悠愛「今どき女の子も守られてるだけじゃダメなんだよ! 男女平等社会? これからは女時代なんだよ! パパを守れるようにならなきゃ!」

 光一「そのいきだ! ユウトォォォォ! 独りは余計なんだよ!」

 手元が狂って音速を使う。

 ユウト「あああああああ!」

 悠愛「きゃぁぁぁぁぁぁ!」

 博士の剣は、切れ味が上がっている。アニメの世界ならよく斬撃が正面に飛ぶ。だがそんなことは起こらない。実際では超音速で振ったところで飛ばない。その代わり振る際に音速の壁を破壊した衝撃がまわりに破壊をもたらす。斬撃を飛ばしたいなら己がそれになるしかない。

 俺は真っ直ぐ上に跳躍きた。雲より上に。落ちる。規格外の重さの大剣を持って。

 光一「地面を斬る!」

 有言実行。俺は落ちたと同時に地面を斬った。ジャックとの戦いで無力さを知った。ジャックは、ほとんど能力に頼った動きをしなかった。それは武器に頼らない変わった傭兵だったからだろう。だが俺は武術なんて知らない。出来るのは能力を生かすことだけだ。

 光一「そのために命を捧げようという何かを持っていない男は、生きるのに値しないんじゃないか! ユウトォォォォ!」

 柄にもないことを言いまくる。せっかく尊敬してくれてるんだ。教職者だからな俺は。

 

プレゼントをあげる。もう後戻りは出来ないんだ2

 

 ユウト「ここって川沿いだったんですよね?」

 光一「やり過ぎたな。てか能力者増えたら星がもたねぇな。割りとガチで」

 川沿いでの特訓だったのだが気づくと跡形もない。警察が来そうなのでとんずらしよう。公共の場所が荒れ地になっちまった。

 光一「逃げよう」

 悠愛「恋の逃避行!?」

 光一「ちげぇわ!」

 川沿いを後にした。てかどうやってこいつら強くすればいいんだよ。剣は、博士の指示する方向に投げつけた。空でロボットでも使って回収するんだろう。

 

プレゼントをあげる。もう後戻りは出来ないんだ3

 

 カフェにきた。ユウトとカフェに来たことはあるが今度は女もいる。

 光一「男二人よりは女いたほうがいいよな」

 ユウト「悠愛ちゃんって先輩の女ですか? あの……未成年はやめておいたほうが……」

 悠愛「悠愛は、パパの女だよ?」

 ユウト「先輩……そりゃないっすわ。パパって呼ばせるとか……。ドン引きです。先輩は咲希ねぇ一筋かと思ってました!」

 悠愛の眉がピクッてつり上がる。

 悠愛「その咲希っていうのが泥棒猫ね! 生まれてきたことを後悔させてやるわ」

 ヒスりそうである。ヤベェ。それと誤解を解かないとな。

 光一「悠愛は、20歳な? それと俺の彼女なんかじゃない。パパってのは悠愛が勝手に呼んでるだけな。理由は内緒だぜ」

 ユウト「ハタチ!?」

 そらびっくりするわな。まぁいい。

 光一「ユウト。お前とあってからまぁ数日たった。お前が慕ってくれるのは素直に嬉しいんだ。だから誕生日聞いてもいいか?」

 ユウト「明後日です。てか連絡先に付属させてますが?」

 光一「違ったら恥ずかしいだろうが」

 ユウト「なんかくれるんですか!?」

 光一「秘密だ。後輩のために肌を脱ぐのが先輩だ」

 買わないわけがないだろう。

 悠愛「そして私のために肌を脱ぐのがパパなんだよね」

 こいつは無視。それにしても何を買おうか。咲希にでも聞くか。一応幼なじみらしいし。

 悠愛「私スッゴく上手いんだよ! こういろんな角度から攻めてね?けどパパもすっごく上手くてね……」

 ユウト「いや僕も少し前は毎日ヤってたよ。激しいのがいいんだよね……」

 にしてもユウトが喜びそうなのってなんだ? わかんねぇーなぁー。

 悠愛「けどパパね。すぐに疲れたとかいって寝ようとするんだよー。そろそろイカなきゃならんだろ? とか言ってくるの」

 ユウト「イケイケとか言ってくる男って嫌だよね」

 まぁ少し金かけてあげてもいいか。それにしてもこいつら。

 悠愛「せっかく盛り上がってるのに飽きたって言うんだよ!」

 ユウト「すぐ飽きるとか……うわぁ……」

 光一「てめぇら公共の場でなんつー話してんだ! 18禁ども!」

 悠愛「えっ? 昨日のゲームの話だよ? 疲れたとかはよ帰れとか言うじゃん。すぐ飽きるし」

 えっ?

 ユウト「先輩まさか……」

 光一「お前ら! そんな目でみるな!」

 恥ずかしい。

 悠愛「パパぁ~。やっぱり私とそういうことした」

 言おうとしたが中断させた。俺が悠愛の顎を人差し指と親指で挟んでくいっと少し上に上げたのだ。顔を近づける。

 光一「それ以上言うな」

 ドスの効いた小声を使う。

 悠愛「なら口でふさいで?」

 あっれぇー?

 ユウト「先輩……流石です。少ない言葉で口説き落とす。極意……見せていただきました」

 何でこうなる。

 光一「もうすぐ梅雨か。雨は嫌いだな」

 

プレゼントをあげる。もう後戻りは出来ないんだ4

 

 朝になった。今は保育園に向かう。今日は何して遊ぼうかな~? 今日は何を教えようか。そんなことを考えながら歩く。

 光一「厳密には俺は教職者じゃないんだがな。本当に教員免許がいるのは幼稚園だ」

 声「そうだな。なのになぜ保育園を選んだ?」

 光一「幼稚園は、学校の仲間だ。遊びから教えてあげたかったんだ。いきなり勉強だと笑わない子になっちゃうかもだろ? 笑わせてあげるために俺は保育園を選んだんだ。幼稚園のほうが学校の仲間ってことで給料は多くもらえるらしいが詳しくは知らん」

 声「最近はその区別が曖昧らしいが?」

 光一「保育児童待機問題があるからな。足りないんだよ。それでもやっぱ幼稚園の私立と県立の金額差は、凄いけどな。それと今じゃこども園なるものがあるらしい。幼児園だっけか? なんか幼稚園と保育園のいいとこ取りらしいがこちらも詳しくは知らない。保母さんになってから勉強が疎かだな」

 声「いや光一は、勉強熱心だ。その熱意は、園児にも伝わるさ」

 光一「嬉しいこといってくれるねー」

 声「俺も伝えれることはすぐにでも伝えておかないとな。もう残された時間もそう多くない」

 光一「えっ?」

 それっきり声が聞こえなくなった。

 光一「いなくなるなんていうなよ。お前が消えちまうなんて嫌だよ」

 「おはよ! また独り言?」

 気づくと咲希が目の前にいた。

 光一「おはよう。あっいいところにきたな!」

 咲希「どしたの?」

 光一「今日……付き合ってくれ!」

 咲希「えええええええええええ!」

 

プレゼントをあげる。もう後戻りは出来ないんだ5

 

 光一「痛い。あー痛いなぁー」

 仕事が終わった。

 咲希「びっくりさせるからだよ」

 朝、なぜか右フックを食らった。

 光一「なかなかいいパンチだったぜ。俺も油断してたからクリーンヒットだぜ。あー痛かったなぁー。今でも痛い」

 いや油断大敵だな。それでトラックにひかれたんだし。どこに危険が潜んでるかわかったもんじゃない。

 咲希「痛いってねー。ぐちぐち言う男は、モテないんだから!」

 光一「俺には咲希いれば十分だよ」

 咲希「もう!」

 光一「オーケーでいいんだな?」

 咲希「いいよ。仕方ないじゃない。こうちゃんを独りにさせると心配でならないんだから」

 おしっ!

 

プレゼントをあげる。もう後戻りは出来ないんだ6

 

 咲希「これなんかいいんじゃない?」

 光一「かわいすぎだろ……」

 となり街のオシャレな雑貨屋にきた。てか女もんばっかで客も店員も女ばかり。場違いだ。

 咲希「ユウトにプレゼント買いたいって言ったのこうちゃんじゃん!」

 人にプレゼントをあげる習慣ってのがないからな。んまぁ喜ばないプレゼントなら自信あるけど。

 光一「あいつがなにほしいとかわかんねぇからさ」

 咲希「心がこもってればなんでもいいんだよ」

 良いこと言ったって顔してやがる。こんな顔も、笑った顔も、泣いた顔も、俺はさ。

 光一「コブラチリとかハッカ油でも?」

 下手はこかないさ。

 咲希「せっかく忘れてあげようって思ってるのに!」

 怒った顔も、俺はさ。

 光一「悪かった。素晴らしいもの買っていってやろうぜ!」

 咲希「うん!」

 俺のことなのに自分のことのように手伝ってくれるその性格が俺はさ。

 

プレゼントをあげる。もう後戻りは出来ないんだ7

 

 結局買ったのは、スリッパとブランケットとハンカチと香水だ。奮発しすぎな……。

 光一「可愛すぎるだろうが! ちょっとこい!」

 咲希「えっ! ちょっ! 強引だって!」

 咲希の手を引いて次の店に入る。ここは通販以外で俺の好きな店だ。オシャレではないがネタに使えるものが売ってる。俺は目を凝らしながら良いものがないか見る。咲希はうつ向いて無言になっている。

 光一「あった!」

 咲希「……」

 手に取ったのは大きな一升瓶。『八回戦』と書いてある。きっと『八海山』をもじったのだろう。この代物はエナジードリンクだ。

 光一「この注意書きを読んでみてくれ!」

 顔が赤くなっている。無理もない。

咲希「え~とご都合により八回戦戦えない場合があります。ご了承下さい」

 光一「ウケるだろ?」

 咲希「ウケない。てか何と戦うの?」

 なぜだ……?

 光一「咲希さんや。これはエナジードリンクだ。マムシも配合されている。何と戦う? はっ! 決まってるじゃねぇか! ベットの上でおん……」

 咲希「きゃぁぁぁぁぁぁ! 変態! セクハラ! 痴漢! 誰か助けてぇぇぇぇ!」

 おおい! マジかよ!

 「ふっ。こんな変態なんぞ俺だけで十分だ」

 「変態相手に一人は危険だ」

 「フルボッコにしてやる」

 「正義を俺達にある」

 屈強な男達が群がりだした。まずい! 能力持ちがいたら!

 光一「お前はバカか! ええい!」

 咲希をお姫様抱っこする。

 咲希「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 状況悪化ですたい。

 光一「黙ってろ。舌を噛むぞ」

 耳元にささやく。

 咲希「……」

 咲希はなにも喋らない。好都合だ。

 光一「逃避行じゃあぁぁぁぁぁぁ!」

 全力疾走である。男どもを華麗にかわす。

 光一「遅いわ! ボケが!」

 なんか楽しくなってきた。騒がしい毎日は、退屈しなくていいぜ!

 光一「俺を追うなら地獄までついてくる気概が必要だぜ!」

 

プレゼントをあげる。もう後戻りは出来ないんだ8

 

 ようやく逃げ切れたようだ。気づくと辺りは、真っ暗……じゃない。

ここはこの街で一番イルミネーションのきれいな場所。俺の後ろにはキラキラしたジャンボツリーが立っている。周りからしたらツリーのしたで男が女をお姫様抱っこしている。ってかなり絵になるんじゃねぇか?

 光一「この木もクリスマスじゃねぇのにな。一年中光ってるつもりかよ。まぁ夜だけか」

 咲希「そろそろ……降ろしてよ……」

 この恥ずかしがる仕草も俺はさ。

 光一「悪かったよ。ほら」

 下ろす俺。

 光一「軽くて助かった。でも店内で叫ぶんじゃねぇよ」

 咲希「こうちゃんが悪いんだから」

 確かにな。だから許してくれよな。

 もう後戻りの出来ないところに行くよ。

 光一「良いこと言ったって顔も、笑った顔も、泣いた顔も、怒った顔も、俺のことなのに自分のことのように手伝ってくれるその性格も恥ずかしそうにしてるその仕草もさ俺は、大好きだ」

 ごめん。ずっと友達なんて無理だよ。

 光一「付き合ってほしい。咲希じゃなきゃダメなんだ」

 咲希は、うつむいている。顔が見えない。でも涙が流れているのはわかる。

 ポタ。

 ポタリ。

 どうして。

 嬉しいのか?

 悲しいのか?

 俺にはわからない。

 それでも俺は、俺には言えないと思っていたことを言ったんだ。答えを権利があるんじゃないか?

 幸せな時間がずっと続けばいい。願うなら咲希 の隣でさ。

 光一「なんで泣いてるんだよ。泣くことないだろ」

 不思議でならない。

 先の小さい拳が震えてる。いや全身が震えている。

 どうした?

 なんで?

 寒いの?

 光一「寒いのか? どうして震えてるんだよ……」

 俺の発言がこんな状況を作り出したのか? 当たり前だ。俺のせいだ。また女の子を泣かせた。どうしろっていうんだ!

 光一「ごめん。俺の発言が咲希を泣かせたんだと思う。でも撤回は出来ないよ。冗談でこんなことは言ったりしない。本気だ」

 俺は……。

 光一「本気で咲希のことが好きなんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 気づくと俺も泣いている。どうして。まだ答えを聞いていないのに。聞きたい? 聞きたくない? もうわかんなくなってきたよ。

 永遠とも思える時のなか咲希が顔を上げた。

その顔にうつっていたのは。そして咲希の唇が動く。ゆっくりと。俺の好きな声で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 咲希「ごめん……ごめん……ごめんね! 私はこうちゃんとは付き合えない…付き合えないんだよぉぉぉぉぉぉぉ!」

 涙のこぼれる速度が増す。

 俺の好きな顔で、好きな声で、目の前の女の子は、俺を拒絶した。ずっと続いてほしいと願っていた。世の中の平和なんかどうでもいい。ただ咲希がいる。いてほしい人がいる。そんな平和は、瓦解した。音を立てて崩れ去った。俺の表現力じゃこの絶望は、表せない。ただ俺は……。

 

 光一「あぁ……ぁぁ……」

 声にならないの叫びを上げた。こういう時、涙は止まってくれない。

鳩とオリーブの葉、付け加えるとするなら人間か 第15話 ビッ○メンヘ○チョロイン

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本作品の内容はフィクションです。
登場する人物・団体・地名等は架空のものであり、実在する人物・団体等とは一切関係がありません。

また本作品には過激な表現が含まれておりますが、犯罪にあたる行為など実際に行われますと、刑法により厳重に処罰されますので絶対に真似しないでください。

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第15話 ビッ○メンヘ○チョロイン


 やっと思い出した。忘れていたのは鳩のことだ。それと鍵閉めてなかった。保育園から病院に運ばれたんだもんな。にしても。

 光一「誰だ! お前はぁぁぁぁぁ!」

 心底訳がわからない展開に声をあげる。

 ピース「僕を忘れたッポ!? とんだくそやろうっぽ! 腹が減って死にそうだったっポ!」

 鳩がなんか言っとる。だが知らん!

 光一「てめぇの事は知ってるわ! エサのことは謝る! セットでついてきているこいつはなんだ! パパとか親になった覚えなんかねぇぞ!」

 口調が荒くなる。こんな状況で冷静でいられるやつは人間じゃねぇな。

 「パパはパパでしょ?」

 マジで意味不明である。こんな子は知り合いにはいない。見た目は背が小さい、胸が小さい、童顔、チャームポイント? は左手に巻いてある。リストバンドか。

 光一「警察に電話をかける。少し黙れ」

 「ちょっとやめてよ! 話聞いて! ねっ?」

 可愛く。ねっ? 何て言う幼女体型さん。うぜぇ。

 光一「わかった。まずは居間に行こうか。そこで事情聴取を行う。異論はないか? 速攻で極刑に処したいところだが話くらいは聞いてやる 」

 俺もつくづく甘いっていうか……。なんかわけがあるだろ。たぶん……。

 

ビッ○メンヘ○チョロイン2

 

 そして居間で裁判が始まった。

 「私は悠愛と申します。神待ちです。てかパパ活してます。結婚してください!」

 神待ちとは、救いの手を差し伸べてくれる人を待つという意味である。そしてパパ活とは女性を援助する男性を探しているという意味らしい。

 光一「あっ?被告人がなに求婚してんだ! ぶた箱にぶちこむぞ!」

 一喝する俺。

 光一「ビッチは嫌いなんだよ! 失せろクズが!」

 ぶちギレする俺。

 悠愛「ヒィィィィィィィィ!」

 光一「ビッチやらメンヘラに関わるとなぁ人生が狂うらしいのでなぁ!」

 悠愛「弁護士さん! 弁護してぇぇぇぇ……」

 泣き泣きで鳩に弁護を頼む悠愛。

 ピース「あーオリーブの葉っぱうまうま」

 光一「先ほど隠しておいたこいつの餌を開放した。盗み食いのために隠しておいたんだよ。よってこいつは俺の味方だ」

 悠愛「それってワイロじゃーん。わーん!」

 光一「てめぇに弁護の余地なんかねぇだよ! 嘘泣きはやめろ! 嘘泣きで罪が許されるなら法律なんていらねぇ! 」

 なんで俺はロリっ子にこんな事言っているんだろうか。世の中何が起こるかわからんな。

 光一「俺は惑わされないからな。情けを乞う姿に!涙して誠意を示すその表情に! 簡単には、許してやらない。まず勝手に家に上がり込むやつにいいやつはいない」

 正論を叩き込む。咲希はいきなり押し掛けて来たっけ。はぁー。脳内ため息ついちまうぜ、

 とたん服を脱ぎ出す悠愛。

 悠愛「体で払うよ。男はこういうのに弱いからね。誘惑という方法で崩落してあげる」

 ふざけるなよ。

 光一「ふざけるなよ……。ふざけるなよ! 体で払う……だと? そう言うのが一番嫌いなんだよ! この18禁が! 自分の体が安いとか高いとか思ってんじゃないのか? 値打ちが少しでもあると思ってんのか? 俺は買わないぞ! バカにすんなよ! 俺じゃない……お前をバカにするな!」

 悠愛「えっ……」

 豆鉄砲を食らった鳩みたいな顔してやがる。

 光一「確かにお前は俺じゃない! でもな良くないだろ? なんでわかんないんだ! お前はお前だろ! 人生は一度なんだ! 自分のやったことは他人が覚えてなくても自分が覚えているんだよ! 一生消えないんだ……体に心に刻まれるんだよ。時間が解決する? はっ! するわけねぇだろうが! あれは嘘だ。絶対に一生後悔する。覚えていろ。忘れるな」

 悠愛「ひぐっ……」

 嗚咽をあげている。気づけば悠愛が泣いていた。ユウトに何て言えばいいんだろうな。カッコいい男には本格的になれそうにないな。

 光一「なぁ。悠愛って言ったか? そんな人生でいいのかよ……。本当は嫌なんじゃねぇのかよ。それとも男との夜の営みにハマっているのか? 寂しいから抱いてくれる男がいないと嫌なのか? もしそうだったら……」

 少し間を空けてから。

 光一「お前が悲しめないのなら俺がかわりに悲しむよ。お節介かもな」

 悠愛「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 光一「まだ泣けるんだ。枯れちゃいないんだろ? やり直せるよ。手伝うからさ。神待ちもパパ活もやめてさ。もう一回、悠愛を始めよう?」

 頭を撫でてあげた。結局、関わってはダメだと思いながらビッチに関わろうとする俺。バカなんじゃねぇのかよ。ダサいな俺さんは……。自分で言ったことをすぐに訂正する。

 光一「人はすぐに裏切るよ? でも自分だけは裏切っちゃダメだ。自分を裏切るやつは最低だ。それ以下の下なんてないんだよ」

 精一杯の優しい口調でいう。最低の俺が。

 

ビッ○メンヘ○チョロイン3

 

 悠愛が泣き止んだ。俺は泣き止むまで頭を撫でてあげていた。

 悠愛「こんなこと言ってくれる人……。今までいなかったから……。これまで出会ったパパは優しかったけど」

 光一「それは悠愛の体が目当てだからだ。優しいに決まってる。決して悠愛を見てたわけじゃない。絶対にそういうやつらは同情なんてしない。確かにしてるつもりのやつもいるかもしれないけど邪な感情を隠せるやつなんてそうはいない」

 悠愛「私は変われるかな。金もないし。ホームレスだし」

 光一「変わる意志があればすぐにでも変われるさ。そう悲観しなくていい。マイナスの感情があったらだんだん嫌な方向に人生が進むよ? でもプラスな感情があれば人生は好転する! 元気だそうぜ!」

 悠愛「ありがとう! パパ!」

 おい。

 光一「パパはやめろ。それじゃあ変わるもんも変わらないだろ」

 悠愛「だって本当のお父さんみたいだもん。男なんてすぐ女の体に目がくらんで……さ……。でもパパは違うじゃん」

 ただ女性との関係に疎いだけなんだがな。

 光一「男もいろんなやつがいるよ。いいやつだっているからさ。俺はそこに分類されないけど」

 悠愛「そんなことない! 私は今……初めて人を好きになったよ! パパはいい人なんだよ! だから結婚して!」

 ちょろインかよ。あっ。ちょろいヒロインってことな。いやメンヘラか? メンヘラは、心の病気を患った人ってことだ。あながち間違ってねぇのかもしれない。

 光一「結婚はしないぞ? てか宿を用意しないとな」

 悠愛「ここがあるじゃない! 愛の巣!」

 光一「だまれ」

 悠愛「うー」

 付け上がらせたらダメだ。調子のらないように厳しくしよう。

 悠愛「パパのその冷たい言葉も私には暖かく感じれるよ?」

 はぁー。ビッチメンヘラっ子は扱いが難しそうだ。

 光一「博士のとこに連れていこう。それがいい」

 悠愛「博士? 嫌だよ! 私ここがいい! パパと一緒のベッドで寝るの! そしてあんなことやこん……」

 尻を叩く。

 悠愛「あん! 気持ちいい!」

 変態さんの発言である。

 光一「悠愛の近くにいると18禁がうつる。子供と話しにくくなるじゃねぇか」

 悠愛「新しい菌? えっと性の病原菌はもってないよ? もう子供のことまで考えてくれるなんて……。私も真剣に考えないと」

 脳内マジでピンク色なんじゃねぇのこいつ。

 光一「外に出るぞ」

 悠愛の手を引っ張って外に出る。

 悠愛「あん! 強引なんだからぁ~」

 疲れる。一刻も速く研究所というぶた箱にぶちこまないと。流石の博士でもメンヘラビッチ女は、研究しないだろう。

 俺は小さい頃一度だけ博士にキレたことがある。実験動物についてだ。主にモルモット、ネズミ、ラットのことである。

 『かわいそうじゃないのかよ!』

 さも当たり前のように博士は動物に注射した。その動物は二度と起き上がることはなかった。

 『失敗じゃな』

 『ふざけんじゃねぇ! なんだと思ってんだ! 神にでもなったつもりかよ!』

 『仕方ないことなんじゃ。こうでもしないと技術は進歩しないんじゃ』

 『何かを殺めてでも進んでいかなきゃならない?  そんなのはエゴじゃないのかよ! このエゴイスト!』

 『エゴイストというのはな。光一よ。利己主義のことを言うんじゃ。厳密には他人のこうむる不利益を省みず、自らの利益だけを求めて行動する人のことのことを言うんじゃよ。だからワシは違うんじゃ。よりよい世の中になるためにやっているんじゃ』

 『そんなのって……じゃあ世の中ってのは何かしらの犠牲を払って平和を保ってるってことなのかよ!』

 『知らなかったんじゃな……誰かがやらなくてはならない。誰かがやっているんじゃ』

 『嫌じゃないのかよ……』

 『嫌じゃ。ワシだって悲しくなるときもある。でもワシの取り柄は研究じゃ。ワシにしか出来ん。出来るのにやらないのは悪なんじゃぞ』

 『善と悪なんてわからねぇ。ごめん。文句言って』

 今でもモルモットは、かわいそうだと思う。簡単には容認できない。

 光一「人間は神なんかじゃない」

 そう呟いた。

 悠愛「パパは神だよ。私は神待ちって言いながら探してたけどねー」

 光一「俺の耳がおかしくなりそうだ」

 すると体が吹き飛ばされた。

 光一「ふげっ!」

 能力を解除していたので大ダメージ。惨めに地べたを這いずりながら顔をあげると騎士型の異形種が立っていた。西洋の剣を持っている。あれで切られてきたら終わっていたな。

 それよりも。

 光一「悠愛! 逃げろ!」

 悠愛に逃げるように催促する。悠愛が震えている。無理もない。

 悠愛「パパになにしてんのよ!」

 えっ?

 光一「キレてる場合じゃねぇ!」

 空気読めよ。ヤバイだろうが。

 悠愛「パパは私が守る!」

 すると悠愛は、高速の蹴りを剣の腹に放った。剣が騎士の手から離れる。流れるような足さばきで悠愛は、騎士に足払いをかけた。倒れそうになる騎士に踵落としを決める悠愛。地面を舐めた騎士に極めつけの踏みつけをかまし騎士は四散した。異形種は、行動停止に陥ると消滅する。このせいでこいつらの正体はわからない。博士が研究出来ないからだ。

 悠愛「パパ! 誉めて!」

 あのスピード。能力か。

 

ビッ○メンヘ○チョロイン4

 

 博士とのご対面の時間である。

 博士「光一や……。見損なったわい!」

 えー。どうしてこうなるのぉ~。

  光一「なんでそうなる」

 疲れすぎて言葉に力が入らない。

 博士「身寄りのない子を家に連れ込んであんなことや! こんなことを!」

 あんなことやこんなことが今日、多いな。

 悠愛「気持ちかった! パパは夜ねー。スゴいんだよ!」

 捏造ナウ。

 光一「嘘はやめ」

 博士「パパなどと呼ばせて! こんな大人に育つなんて誰が想像すると言うんじゃ! じいちゃんは悲しいぞい……」

 言葉が遮られる。

 光一「博士。よく聞け。悠愛は、空き巣だ。俺が病院にいる間に家に上がり込んだんだ」

 事実言う。

 悠愛「パパひどい! こんな可愛い子をいじめて楽しいの!」

 光一「ああっ! 泥棒が何いってんだ! ボケが! 正義は俺にある! 罪人は黙ってろ! 二度と喋れないように口をふさいでやろうか!」

 俺にはまだ怒る元気があったらしい。

 悠愛「ごめんなさい。せめて私の口をふさぐならパパの口で……」

 キッと! にらむ俺。

 悠愛「うぅ~」

 疲れる。もう余計な話はいい。

 光一「身寄りがないみたいだからここに来たんだよ。博士ならなんとか出来るかも知れないだろ?」

 博士「面倒を持ち込んでいいなんて言ってないぞい」

 光一「それと悠愛は能力者みたいだ。さっき俺が異形種に襲われた時に助けてもらった」

 悠愛「これで貸し一つって事だよね! 子供一人ゲットだね!」

 シカトする。

 光一「どうする?」

 博士「身寄りがないのぉー」

 光一「ホームレスで神待ちやパパ活で過ごしていたらしい。どんなに平和でも後が絶たねぇよな」

 博士「そうじゃな。身分を証明することが出来ないんじゃよな? うーむ。同棲は認めんぞい」

 光一「願い下げだ」

 悠愛「パパぁ~。私の変わるとこ見てるんでしょ~」

 無視する。

 博士「自己紹介くらいはいただいておくかの」

 光一「おい。悠愛。自己紹介しろ」

 悠愛「はい! 親はいないよ。えーと見ての通り幼女体型でぇー胸小さいの! でもね! 私は20歳だけどでこの童顔で胸が小さいのがね! ウケるの! 下の毛は……」

 バチーん! 勢いよく尻を叩く! これ以上はあかん! 黙らせないと! ってえっ?

 光一「20歳だと!?」

 博士「合法じゃな」

 光一「その見た目で20歳とか嘘言うんじゃねぇ!」

 悠愛「嘘じゃないもん!」

 光一「証拠がねぇだよ!」

 博士「本人が未成年じゃないと言えば合法なのか?」

 おい。冷静になんか考えてるぞ。くそじじいが。じゃ! とか消えてるし。

 光一「エロジジイ……。なに考えてる。音速使って研究所に破壊のかぎりを尽くしてやろう」

 博士「やめい! いやな光一よ。お主は結婚とか考えんのか? 目の前にいい相手がいるんじゃぞ?」

 悠愛「えっへん!」

 無い胸をはる悠愛。

 光一「好き合ってないのに結婚できるか! 出来ちゃった婚とか俺が嫌いなの知ってるだろ? 子供がかわいそうだ」

 悠愛「しゅん……。いいのよ。今から口説けば振り向いてくれる! これからラブストーリーが幕をあけるのよ! ヒロイン悠愛! がんばる!」

 しゅん……とか口に出すやつ初めてみた。

 悠愛「ちなみにチャームポイントは、左手のリストバンド! かわいいでしょ! 時計の代わりにもなるんだよー。そりゃ!」

 悠愛がリストバンドを触るとホログラムが写し出された。地面に光が当てられ時間が写し出されている。

 光一「便利……かもしれないな……」

 どうでもいい機能。

 悠愛「しかも防水! もふもふだけどねー水弾くの!」

 光一「あっそ」

 悠愛「冷たいんだ~。う~」

 下らないことに時間をとったな。

 光一「悠愛は置いていく。博士に後は頼んだ! ではな!」

 逃げるが勝ちである。

 博士「光一や。人生の最後のモテ気かもしれんぞ。結婚してしまえ。それとも好きな子でもいるのか?」

 光一「いるよ」

 博士「ほぇ?」

 悠愛「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 まずったぜ。口走ったぜ。てか悠愛がリステリーだ。大声でわめく様である。怖い。

 悠愛「パパは私の物……。誰よぉぉぉ! 泥棒猫はぁぁぁぁぁ!」

 恐怖である。

 

ビッ○メンヘ○チョロイン6

 

 すたこらさっさーっと家に帰って来た。出迎えてくれるのは鳩。

 ピース「ちゃんと謝ってほしいっぴ」

 光一「悪かったよ。いや俺の人生におけるお前の出番少なすぎでさ~。忘れてたわ」

 てへっ! 軽く舌を出す。

 ピース「きもいっぴ。光一もいつか僕の存在に感謝する日がくるっぴ」

 ねぇだろ。鳩に何が出来るっていうんだ。重要な場面での登場には期待出来なさそうだ。

 光一「せいぜいその時は俺だけじゃなく世界まで救ってくれなぁー」

 ピース「任せておくといいっぴ!」

 体は小さいが態度はデカいな。悠愛もか。

 声「光一は、好きな子がいるらしいぞ」

 余計なことを。

 ピース「弱味を握ってオリーブの葉をせがむ。いい手だっぴ」

 うぜぇ。

 光一「握りつぶされたいのか? 俺の能力つきの怪力抜きでもピースなんぞペシャンコだ」

 ピース「ヒィィィィィィィィ! 動物愛護団体につきだしてやるっぽ!」

 光一「あっ?」

 指をポキポキ鳴らす。

 ピース「冗談っぽ」

 潔いやつばかりで助かる。

 光一「それにしても好きな子ね。21歳って結婚について考えるとしかねー」

 声「付き合ってるやつがいないのはヤバいかもな」

 光一「天涯孤独でいいなんて思ってたのに……。あいつが俺に優しくするから勘違いしちまうんだよ」

 声「言わないと伝わらないぞ」

 光一「わかってるさ」

 近々、俺はあいつに……。

鳩とオリーブの葉、付け加えるとするなら人間か 第14話 病院生活も悪くない。だけどなんか忘れている気がする

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本作品の内容はフィクションです。
登場する人物・団体・地名等は架空のものであり、実在する人物・団体等とは一切関係がありません。

また本作品には過激な表現が含まれておりますが、犯罪にあたる行為など実際に行われますと、刑法により厳重に処罰されますので絶対に真似しないでください。

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第14話 病院生活も悪くない。だけどなんか忘れている気がする


 「ひっぐ……。死なないでよ……。お願いだよぉ……」

 意識が覚醒しきっていない。薄目を開けるとそこは白い天井があった。天国か?

 「こうちゃん……こうちゃん……」

 泣き声がする。咲希の声か? 俺のこと心配して泣いてくれるやつなんていたんだな。

 あぁ咲希は夢にも出てきたな。そうか。そうなんだよな。なかなかに気づくのが遅かったな。俺は咲希のことが……。

 

病院生活も悪くない。だけどなんか忘れている気がする2

 

 目が覚めた。俺が最初に目にしたのは。

 ユウト「おはようございます! 先輩! 二度と起きないかと思いましたよ!」

 ユウトだった。正直ガッカリである。

 光一「寝起きに野郎の顔見るとこんなに腹が立つもんなんだな。初めて知ったわ」

 ユウト「寝起きに愛すべき弟子の顔って最高じゃないです?」

 なわけねぇだろうが。

 光一「あっ?」

 ユウト「すいません! 冗談です! でもさっきまで咲希ねぇが来てましたよ? いや泣いてるんで僕は咲希ねぇが出てから入ってきましたけど」

 咲希が泣いていた?

 光一「咲希のこと呼び捨てはやめたんだな。良いことだ。で? 咲希を泣かせたのはお前?」

 ギロリとユウトをにらむ俺さん。

 ユウト「泣かせたのは先輩ですよ。トラックにひかれたんですもん。先輩だったらトラックなんて破壊しそうなものですけど……」

 どういうことだ?

 光一「俺が泣かせた? なんでそうなる? それとトラック吹き飛ばしたら運転手が大変なことなるだろ? てか眠かったから能力発動が遅れたんだよ 」

 死んでないのが何よりの証か。間一髪で能力が発動したらしい。それでも体の節々が痛い。能力を今、解除したら痛みでのたうち回るんじゃないだろうか。

 ユウト「それで全治3ヶ月の重症ですか……」

 光一「はっ? いくらなんでも長すぎるだろ!」

 ユウト「普通は今ごろ天国ですよ……」

 トラックにひかれた場合だとまだましなダメージらしい。まぁ博士の最新医療システムをこっそり借りればそんなにかからんだろう。後から連絡するとしよう。

 光一「で? なんで咲希が泣くんだよ?」

 ユウト「先輩が死んでしまったと思ったんじゃないですか? 本人に聞いてくださいよ」

 光一「ユウトは泣いた?」

 ユウト「泣くわけないじゃないですか。能力ありますし」

 ですよねー。

 ユウト「女を泣かせるやつは男じゃないですよ? ちゃんと謝ったほうがいいです」

 光一「お前にそんなこと言われる日が来るなんてな」

 人間ってのはそう簡単には変わらないというが努力すれば変われる。ユウトはきっと努力したんだろうな。俺よりきっといい男になる。

 

病院生活も悪くない。だけどなんか忘れている気がする3

 

 次の日、咲希がきた。

 咲希「こうちゃんが起きてる? こうちゃんが生きてる? うわぁぁぁぁぁん!」

 泣きながら抱きついてきた。ピアノの時といいスキンシップが多くなってきたな。いつもペチペチ叩いてくるけども……。

 光一「たかがトラックに跳ねられたくらいで大袈裟過ぎるだろうが」

 咲希「たかがじゃないでしょぉぉぉぉ! どれだけ心配したと思ってんの!」

 確かに。能力のせいで感覚が狂ってるな。

 光一「心配かけたな。ごめん。泣いてるとこ悪いんだが。今は昼だよな? なんでここにいる?」

 こことは病院のことだ。昼時は仕事の時間のはずだ。

 咲希「こうちゃんが心配で……。仕事に集中出来ないんだよ」

 これは本格的に罪悪感が……。

 光一「そっかぁ。全面的に俺が悪いな」

 咲希「そうだよ! こうちゃんが悪い! あっ忘れてた! これ!」

 おもむろに取り出したのは折り紙で折った鶴。その量はとんでもない量。もしかしてこれは。

 光一「千羽鶴?」

 咲希「そうだよ」

 初めて見たかもしれない。保育園のなせる技か。微笑ましい気持ちになるな。

 光一「ありがとう。嬉しいよ」

 咲希「うん。明日は大好きなプリン持ってくるね」

 

病院生活も悪くない。だけどなんか忘れている気がする4

 

 夜になった。咲希はずいぶん前に帰った。今は博士と通話している。

 博士「最新医療の件はわかったわい。すぐに手配させる。光一よ。最近更に世間が騒がしくなっておる。能力者が増えた。そしてついに異形種が昼間暴れだした」

 どういうことだ?

 光一「あいつらはこっちから手を出さなければ攻撃してこないんじゃなかったのか!? しかも昼間って!」

 博士「光一や。ゲイシーは、昼間から行動を起こしていたじゃろう? あの人形どもは形状から言ってゲイシーの持物であるのは確実じゃ。今まで夜だけ動いていたのもそして反撃だけだったのも気まぐれに過ぎんと思うのじゃ」

 光一「くそっ! こんな時に俺は!」

 博士「そう心配するでない。街では警察が異形種に歯が立たない代わりに能力者が集まって自警団などを結成しつつある。光一の弟子のユウトじゃったか? 奮闘しておるそうじゃぞ」

 世界が変わりつつあった。平和とは程遠い世界に。

 それにしても何か忘れている気がする。

 

病院生活も悪くない。だけどなんか忘れている気がする5

 

 次の日の昼。咲希がきた。俺は呑気にテレビを観ている。

 『これで江戸の町も平和が訪れるだろう。めでたし。めでたし。』

 時代劇のラストである。

 光一「どうせまた黄色の服着た悪代官が手下連れてなんかやらかすんだろうが。平和なんて訪れやしねぇよ」

 咲希「こうちゃんは冷めてるね~。てか熱いけど冷めてるよねー」

 プリンを俺の口に放り込みながら咲希が言った。

 光一「言ってる意味がわからん。てかそれ結果的に冷めてるだけだからな。あープリン旨いわぁー」

 そういって俺はチャンネルを変えた。テレビなんて普段観ないからなぁ。謎の声は美姫だったか? アイドルが好きなんだったな。

 チャンネルを適当に変えてると美姫が映った。

 光一「かわいいな。というか美人か」

 誰がみてもそういうだろうという感想を漏らす。

 咲希「こうちゃんはアイドルオタク? 好きなタイプはアイドル! とか恥ずかしいこと言っちゃう系の人?」

 決して俺はアイドルオタクではない。それと。

 光一「全世界のアイドルオタクを敵に回したな。御愁傷様。てか俺はアイドル知らねぇし。でもアイドルってのは偶像でさ崇拝される人や物とかそういう意味だろ? そういう意味ではさ美姫はきっと断トツでアイドルやってると思うよ。見た目もさることながら浮いた噂も特にない。しかも踊って歌えるんだろ? ドラマもバラエティーもそつなくこなすらしいし。声優活動もしててナレーションもするとか」

 スペックお化けすぎワロタ状態のアイドルだ。

 咲希「詳しいね。なんだか意外だなぁ」

 咲希がそう言いつつなんとも言えない顔をしている。

 光一「俺はテレビあんまり観ないけどニュースはそれなりにチェックしてるつもりだ。アイドルなのに重大な場面で結婚します! とか言ったりさファンと付き合って、別れて、挙げ句の果てに付き合ってたファンにマスコミが好きそうな情報ばらまかれてどうする。既婚者に手を出したアイドルなんかもいるらしいぞ」

 咲希「美姫はそんなことしないと思うな」

 光一「どうだか。根拠のないことは言うもんじゃない。最近のアイドルはアイドルをちゃんとしてない。動画投稿サイトとは違うんだ。テレビなんだぞ? 全国放送なんだ。視聴率1%が約110万人なんだぞ? 自覚を持つべきだ。テレビだって社会を作る一部なんだ。離婚やら浮気やら未成年と付き合うなんて御法度だろうが! 子供だってみてるんだ」

 咲希「やっぱりそこに帰結するんだね。子供に本当に優しいんだから」

 光一「大人の身勝手で子供が悪い大人になるのが嫌なんだよ」

 咲希「こうちゃんみたいな人が増えればいいなぁー。ってたまに思うよ」

 光一「俺は優しくないし。俺みたいなやつが増えたら大変だ。女の子にコブラチリとかハッカ油をカチこむからな」

 ベチッ! 頭を叩かれた。

 咲希「もぉ! いい話し出したと思ったらすぐこれだ! アホぉ!」

 光一「女の子じゃなかった。暴力ババァだった」

 ベチッ!! 次は思いっきり強く叩かれた。

 咲希「キィィィィィィィィィィ!」

 モンスターみたいな声をあげている。

 光一「モンスターみたい声だな」

 声に出しちまった。なんか病院生活も悪くないな。

 ふと思った。何かの存在を忘れてはいないかと。

 

病院生活も悪くない。だけどなんか忘れている気がする6

 

 退院の日になった。

 光一「お世話になりました」

 ナースさんに頭を下げる。看護師さんなんておばあちゃんばかりだって聞いていたけどここの看護師さんは綺麗な人ばかりだったな。若いし。偏見だったわけか。

 「治りが早すぎましたね」

 光一「博士のことはご存知でしょう?」

 博士は有名人だからな。何かと……な。

 答えは聞かずに1ヶ月居た病室を出た。

 すたすたと早めに歩き病院を出る。外の空気を吸いたかったからだ。

 光一「やっぱシャバの空気はうめぇや~!」

 病院を出た瞬間に叫ぶ俺氏。

 声「お勤めご苦労さん」

 光一「一度は言ってみたかったんだよなぁ! ちなみに娑婆ってのは世の中のことな!」

 声「はいはい」

 光一「てか俺さん何か忘れてね?」

 声「帰ればわかる」

 光一「ふむ。帰るとしよう! 我が家に!」

 スキップで我が家に向かう。病院とか落ち着かなかったし。

 

病院生活も悪くない。だけどなんか忘れている気がする7

 

 灯りがついている。もちろん我が家が……。

 光一「これはヤベェやつじゃねぇか?」

 声「泥棒が窃盗ナウ?」

 能力を発動させた。これで泥棒なんて相手じゃない。

 光一「能力で暴れたら俺の家なんて音速を一撃使ったら崩壊じゃねぇか」

 泣けてきた。

 声「さよなら。我が家。今のうちに手を合わせておけよ」

 くそぅ……。御臨終かよぉ……。

 意を決して空き巣を撲滅するべく俺は我が家の入り口のドアに手をかけた。

 光一「ただいま帰りましたよ! 俺ん家ぃぃぃぃ! 泥棒さん! こんにちはぁぁぁぁ! 警察につきだしてやるぜぇ!」

 息巻いて突撃をかました俺。待っていたのは。

 ピース「助けてくれっピぃ~! 遅すぎるっポぉぉぉぉぉぉ!」

 「あはははははは! おかえりなさい! パパ!」

 鳩と幼女体型の女の子だった

鳩とオリーブの葉、付け加えるとするなら人間か 第13話 上の名前で呼ぶと他人行儀。下の名前で呼び合うと?

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本作品の内容はフィクションです。
登場する人物・団体・地名等は架空のものであり、実在する人物・団体等とは一切関係がありません。

また本作品には過激な表現が含まれておりますが、犯罪にあたる行為など実際に行われますと、刑法により厳重に処罰されますので絶対に真似しないでください。

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第13話 上の名前で呼ぶと他人行儀。下の名前で呼び合うと?


 こいつは確か安藤咲希。俺が人を寄せ付けないようにしてるのに馴れ馴れしくしてくるやつだ。

 「応援なんかいらん。帰れ」

 「いやー」

 うぜぇー。知らんぷりして俺は鍵盤を叩くのを再開した。

 「その弾き方じゃ疲れるよ? プロじゃないんだし大袈裟に弾く必要なんてないんだから」

 そう言ってまた手の甲にコインを乗せてくる。

 「いや邪魔するなら帰れよ」

 「だ~か~ら~! 手の甲にコイン乗せながら弾いてみなよ。 落とさず弾けたらもっと上手く滑らかに引けるよ? それとこれ!」

 安藤がカバンから何かを取り出した。

 「これはメトロノームだよ! 音楽やるなら必須! 使い方教えるね!」

 

上の名前で呼ぶと他人行儀。下の名前で呼び合うと?2

 

 「おおっ! なんかいつも出来なかったのに出来る!」

 「ほらね? こうちゃんは頭良いんだから余裕だよ」

 「こうちゃん?」

 「光一だからこうちゃん!」

 呼び捨てを通り越してあだ名……。

 「私のことは咲希ちゃんって呼んでね!」

 「わかったよ。安藤。今日のことは感謝してやる。今後一切俺に関わるな」

 「やだ! なに一匹狼気取ってんの! そんなのかっこよくないんだから!」

 「あーうるさい」

  「うるさいのはわかったよう。だからお願い。咲希って呼んで? 上の名前って他人行儀じゃない? 私そういうの嫌なんだ」

 「他人だろ?」

 「友達ね?」

 「お前めっちゃ友達いるだろうが。欲張るな。これ以上はいらんと思え」

 「私の事知ってるの?」

 「名前は安藤咲希。成績優秀。友達多し。そしてめちゃくちゃモテる。校内で告白現場を数回見たんでな」

 「知ってるんだ! 何気に詳しい! うれしーい!」

 テンションが高い。

 「だからもうお前にはもう友達はいらないんだ。友達100人出来るかな? とか考えていたら本当の友達の一人も出来やしないぞ。友達なんてのはな本当の友達一人いれば事足りるもんさ」

 「友達いないくせに語ってやんのー」

 グサッ! 俺の心に矢が刺さったぜ。ガラスのハートは矢を弾いてくれたりはしないようだった。

 「うるさい」

 「こうちゃんのさ~本当の友達になってあげるよ」

 「いらねぇよ。俺にはそんなの」

 「いるの! 必要なの! 人は一人じゃ生きていけないんだよ!」

 「勝手に一人にするなよ」

 「私は諦めないから!」

 そう言うと安藤は去っていった。

 「ごめんな。咲希。本当はすごく助かったよ」

 すると教室のドアからピョコっと咲希が顔を出した。

 「咲希って呼んでくれた! あー! 嬉しい! 独り言のその癖直さないでいいよぉ! またねー!」

 そう言うと咲希は今度こそ姿を消した。

 「マジかよ」

 「油断したな。光一さんよぉー」

 なかなかの策士っぷりに唖然とする俺氏。なんだか咲希とは長い付き合いになる気がした。

 それにしても上の名前で呼ぶのは他人行儀に聞こえるのか。俺と咲希はもう他人じゃないのか?

 

上の名前で呼ぶと他人行儀。下の名前で呼び合うと?3

 

 次の朝、事件が起きた。

 俺は休みなのでとなり街に出掛けようと市内電車乗り場にきた。となり街に行くには市電を使って鉄道が走っている駅まで行かなければならない。その鉄道を使ってやっととなり街までいけるわけだ。

 「おい……。カラス……。そのままじゃ跳ねられちまうぞ」

 カラスが線路に横たわっている。

 『カー! カー!』

 鳴きながら。ケガをしているのかバタバタと翼をはためかせても飛べていない。体がずれていってこのままだと車にひかれてしまう。

 なんでみんな何事もない顔してんだよ! 市電を待っている人は携帯をいじったり本を読んだりして見て見ぬふりをしている。

 カラスの目が俺に向けられた。

 『助けて』そう言っている気がした。

 「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 絶対にお前を助けてやる!」

 俺はカラス目掛けて走った。ラグビー選手さながらのダッシュをかましカラスを懐に抱え込む。カラスは暴れるがお構いなしだ。能力で痛みは緩和されている。道路からカラスを救出し。俺は。

 「はぁはぁ。どうしたらいい」

 経験がなかったから戸惑った。

 「動物病院に保護してもらおう」

 興奮気味なのか声に出してしまう。

 今時の携帯電話はネットが使える。即座に近くの動物病院に電話した。

 プルルルルルルルルル。繋がらない。

 「休みだって言うのか!? くそっ!」

 次は警察だ。

 プルルルルルルルルル。プツ。

 出た!

 「すいません。神城光一と申します。市内電車乗り場でケガしたカラスを保護したんです。どうすればいいのでしょうか?」

 「また迷惑電話か。すまないね。神城光一くんって言ったね? そういう電話は市役所に電話するもんだよ」

 ブツ。一方的に切られた。これだから大人は嫌いだっていうんだよ! 次は市役所か!

 プルルルルルルルルル。プツ。

 おしっ!

 「すいません。神城光一と申します。市内電車乗り場でケガしたカラスを保護したんです。このカラスを保護して貰えませんか?」

 「神城さん。カラスは害獣の区分となっております。保護することは出来ないのですよ」

 いい加減腹が立ってきた。

 「だったらどうしろっていうんだ! 見殺しにしろとでも言うのはお前はぁぁぁぁぁ!」

 ブツ。切られた……。

 「ごめんな……。そんな助けてって目を向けられても俺にはどうすることも出来ないんだよ」

 気づかなかった。そして今気づいた。俺は泣いている。

 「痛いだろ……。でもさ人間はお前を助けることが出来ないんだ……」

 『カー! カー!』

 道の脇に抱えていたカラスをおろす。

 「無力だよな……。力不足だよな……。絶対に助けてやるなんて言っておきながら無責任だよな。人間にとってお前は害獣なんだってさ……」

 知らなかった。知ってたら俺はあいつらと同じで見て見ぬふりをしたのか?

 「お前が苦しんでいても誰も助けてあげれない。 生まれ変わるならさ人間になれよ。ダメか。お前は人間を許さないもんな。ごめん! 謝ることしか俺には出来ないよ」

 どうすればよかった?

 「カラスは人間の言葉がわかるんだっけ……。すごく頭いいんだよな。今の世の中はお前にとってはまったく平和じゃないんだよな。ごめんな。俺がお前の立場だったら許せるはずがないよ。世の中も目の前にいるやつもさ」

 

上の名前で呼ぶと他人行儀。下の名前で呼び合うと?4

 

 咲希「バカ! 起きてよ!」

 光一「いたっ!」

 頭を叩かれたみたいだ。

 光一「なんだよ暴力女」

 咲希「私がピアノ弾いてる最中に寝ないで!」

  光一「聴き浸っていたら寝ちまったんだよ。心地よいって意味なら最高だろ?」

 咲希「……」

 様子がおかしい。なんか咲希の顔が変だ。

 光一「なんだ?」

 咲希「こうちゃん……。泣いてるよ」

 光一「えっ?」

 手で目もとを拭うと水滴がついていた。というか涙が止まらない。

 光一「バカっ! 見るな!」

 顔を隠した。

 咲希「どうしたの? 悲しいことがあったの? 言ってよ。友達でしょ」

 光一「夢を見たんだ。初めて咲希を咲希って呼んだ日のことを」

 ピアノを聴いてたからだろう。夢は深層心理を見るという。自分を見たということか。

 咲希「なんで私を名前の呼んだ夢みて泣くのよ! 最低! そんなに嫌だったの!」

 光一「違うってそれと一緒に嫌な夢を見たんだよ」

 俺は助けれなかったことを後悔してるのか。

 咲希「そっか」

 咲希はそう言って俺を抱き締めた。

 咲希「こうちゃんはさカッコいいから涙我慢してるんでしょ? 顔は隠してあげるから今ならカッコ悪くなってもいいよ」

 恥ずかしいと思った。でも俺は……。

 光一「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 カラスを見殺しにしてしまったのが辛かった。号泣してしまうほどに。

 咲希が友達で良かったと心底思った。

 

上の名前で呼ぶと他人行儀。下の名前で呼び合うと?5

 

 光一「さっきは……。なんつーかごめん」

 自分の心がこんなにも脆かっただなんて。

 咲希「いつでも胸貸して上げるよ」

 園児(男)「俺にも胸貸して。かーちゃんの飽きたよ」

 園児(女)「咲希お姉ちゃんって結構大胆だよねー」

 咲希「そういう意味で言ったんじゃない!」

 どんな意味だよ。でももう金輪際借りるつもりはない。金輪際とは決してとか二度ととかそういう意味だ。

 光一「マジで悪かったから埋め合わせはするよ」

 咲希「なにタカろうかなぁー」

 ちなみにねだるという意味。

 光一「タカるとかやめろ。園児が真似するだろ」

 咲希「うっふふふふふふ」

 はぁー。でも恩は返さなくてはな。

 少し時間があるのでボール遊びでもしよう。

 光一「みんなまだ動き足りないんじゃないのか? ピアノもよかったけど体動かさないとな! 外に出るぞ!」

 

上の名前で呼ぶと他人行儀。下の名前で呼び合うと?6

 

 ボール遊びをして何分かたった。

 俺は見るだけだ。遊びながら見てもいいんだが眠いので動かない。すると園児の一人が飛んできたボールを掴み損ねた。ボールは幼稚園の場外まで飛んでいってしまう。

 園児「あー! ごめんね! 取ってくる」

 光一「俺が行く」

 聞く耳を持ってくれない園児が外に出ようとしている。俺は走った。ったく世話が焼ける。

 幼稚園出入り口前にボールはあった。園児はボールを拾った。その時に『プー』っと音がなった。俺はヘッドスライディングをし園児を抱え込む。見えたのは今まさに俺をひこうとしているトラック。さっきの音はクラクションだったわけか。これは流石に終わったな。

 最後に思ったことは咲希に言っておけばよかったということ。なにを……。

鳩とオリーブの葉、付け加えるとするなら人間か 第12話 敗北? 私はその言葉の意味を存じ上げません

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本作品の内容はフィクションです。
登場する人物・団体・地名等は架空のものであり、実在する人物・団体等とは一切関係がありません。

また本作品には過激な表現が含まれておりますが、犯罪にあたる行為など実際に行われますと、刑法により厳重に処罰されますので絶対に真似しないでください。

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第12話 敗北? 私はその言葉の意味を存じ上げません

 


 「いや~博士の早業には恐れ入ったね! オレが出てきた瞬間、髪の色変えてくれるんだもんなぁ~」

 青年はさっきまで床を何回も舐めたのに平気な顔をしている。

 すると練習場内に大きな声が響いた。

 「光一が気絶するもんじゃからなぁー。出てくると思ったわい! 今からデバイスを落とすぞい」

 「はいよー」

 傭兵は何が起こったのかいまいち理解出来なかった。あれだけ痛め付けた小僧がいきなり顔色も変え。髪の色も変え。声まで変わっている。

 青年は天井から落ちてきたデバイスなるものを手に取った。形状はタッチ式携帯電話とさほど違いがない。

 「博士~。獲物をくれよ」

 「ほーい」

 青年は天井から落ちてきた。大剣を左手でキャッチした。

 「傭兵さん? あージョッキだっけ? 泡立つ黄色い飲み物さんの入れ物?  こいよ」

 ジャックはいきなり威勢がよくなった青年に腹が立った。すぐに青年の懐に飛び込み攻撃を開始した。だが全てかわされる。

 「光一は単調なんだよなぁー。避けるってことあんまり知らねぇし。まず好んで戦ってないしな。降りかかる火の粉を払うって気持ちも足りない」

 青年は攻撃を避けながら独り言を呟いていた。その青年がデバイスに指を置いた。

 「うぉぉぉぉぉぉぉ!」

 とたんジャックが中に浮く。足場が浮き上がったのだ。

 「なんの細工もしてないわけがないだろう。傭兵さんは博士と俺を舐めすぎたんだ。人間宙に浮かされたなら何も出来ない」

 そしてどこからともなく発射された銃弾とミサイル群がジャックを襲う。

 「花火なんて久しぶりにみたな。爆風で傭兵さんの姿みえないし」

 なんて悠長な事を言う青年。

 「そろそろ火花も煙幕も邪魔だな」

 大剣を構えた青年はその花火に音速の斬撃を浴びせた。浴びせたという表現は何回その大剣を振ったかわからないからである。

 まさに台風のような爆風が吹き荒れ煙幕が晴れると壁にめり込んでいるジャックがいた。

 「まだ意識があるみたいだ。博士の練習場の頑丈さにもビビるけど傭兵さん流石だな」

 パチパチ拍手をしながらジャックの元に向かう青年。

 「小僧じゃないな。青年よ。こんな切り札を隠していたとはな。心底驚いたぜ。どうしてやられたふりをした?」

 ジャックは青年に問う。

 「傭兵さんは強いよ。志も俺とは大違いだ。でも俺には俺の人生をかけて守らなきゃいけないものがあるんだよ。傭兵さんの大義名分は聞いた。すごくいいと思うでもな。復讐心に身を焼かれると子供にも負ける。覚えていたほうがいいな。大人はすぐ嘘をつく。俺も大人だが俺は一生本当の大人にはなれそうにないな」

 ジャックは返答になってない気がした。

 「どういう意味だ」

 「言葉の通り。苦しまずに終わりにするって言ったよな? 俺が決行して正義になってやるよ」

 青年が思い出したように言った。

 「決めセリフだ。よく聞いておけ。

Defeat? I do not recognize the meaning of the word.

  傭兵さんは外人だろ? 意味はわかるな?

 敗北? 私はその言葉の意味を存じ上げません」

 青年はジャックの顎を拳で撃ち抜いた。

 「得意技なんでな」

 人間は正確に顎を撃ち抜かれると脳震盪を起こし気絶する。だが狙って顎を撃ち抜くのはプロのボクサーでも難しい。青年の能力あってこそ出来る芸当である。

 

敗北? 私はその言葉の意味を存じ上げません2

 

 目覚めると博士の研究室の天井が見えた。

 光一「生きてる!?」

 ガバッと音を立てて布団をはねのける俺氏。

 博士「あはよう。光一」

 光一「恒例になってきたから脳内解説もやめたわ」

 博士「わしも慣れた」

 とにかく俺は生きてるらしい。

 光一「ジャックは?」

 博士「光一が気絶した瞬間あいつが気絶したので宙に浮かせてフルボッコ」

 光一「マジでそれ最初からやれよ」

 博士「あいてはプロじゃぞ? 避けられるわい」

 だよな。完全に格が違った。

 光一「今のこの世界は核がなくなっても平和じゃないんだなって改めて思ったぜ」

 博士「そうじゃな。これからわしもテロリストの的になると思うとゾッとするわい」

 光一「どーせ返り討ちにするんだろ?」

 博士「それはさておいてわかったことがある」

 さておかれた……。

 光一「なんだ?」

 博士「ジャックも光に包まれたそうだ。そしてこの国限定で相次いで能力覚醒が起こっておる。警察は誰一人として覚醒しておらん」

 光一「どういうことだ?」

 博士「そしてジャックは素手のみの変わった傭兵じゃった。つまり殺傷武器を使ったことがない人のみ光に包まれる」

 光一「完全に人為的じゃねぇか!」

 博士「人に作れるものとも思えんが可能性はあるということじゃ。目的はわからん」

 一応謎が一つ解決したのか深まったのかわからなかった。

 

敗北? 私はその言葉の意味を存じ上げません3

 

 光一「眠い。やる気でん。今日はみんな咲希のピアノコンクールの時間な」

 今はお昼寝が終わってからの自由遊びの時間。もちろん保育園の仕事の時間である。眠たすぎて午前中のことがあまり記憶にない。昨日……いや今日はいろいろありすぎた。

 咲希「こうちゃんさー。今日ぼ~っとしすぎだよ? お昼大好きなプリン出てきてもぼ~っとしてた。いつもなら子供達のプリン奪い取る勢いで元気なのに」

 光一「昨日は美女が寝かせてくれなかったんだ。どうして寝かせてくれなかったって? おこちゃまにはまだ早い話だな」

 寝かせてくれなかったのは外国人のおっさんである。悲しい。

 咲希「殴るよ?」

 光一「冗談言っただけで殴ろうとしてくる咲希さん怖い! こんな大人になっちゃダメだぞ? みんな~」

 咲希「はぁーこうちゃんがテンション低いしピアノ弾いてあげるよ」

 咲希が保育園にある一番高価な物。グランドピアノの前に座る。俺は園児達を集めた。

 光一「みんなー?今からお姉ちゃんが久しぶりにピアノ弾いてくれるぞ? 聴きたいやつは、こっちにきなさーい」

 園児達「わーい!」

 咲希のピアノは定評がある。てか上手すぎるので大盛況である。専門学校では一目置かれていた。てか先生より上手いとかプロになれるんじゃねぇかと思ったりした。

 保母さんになるにはピアノは必須科目である。俺はバカみたいに苦労した。マジで冗談抜きでだ。

 そして咲希がピアノの音色を奏でだした。

 光一「やっぱ凄いな」

 俺はつい感嘆の息を漏らす。うつらうつらとしてきた。ずっと聴いていたいんだけどな……。

 

敗北? 私はその言葉の意味を存じ上げません4

 

 小鳥のさえずりが聞こえる。外が明るい。

 「あー! 眠い! もう朝かよぉ~」

 学校に出掛けなければならない。けど二度寝したい。

 「二度寝したいとか思ってるだろ? ダメだぞ。 このままだとピアノの試験落として卒業出来なくなる」

 俺は一人だ。言葉の通り独り暮らしだ。なのに俺以外の声が聞こえる。不思議だ。これは今に始まったことではない。この声はいつだって聞こえてきた。

 「わかったよ。さっさと学校に行って昨日買ったピアノの練習本でも読んでるかぁ~」

 「それがいい」

 学校に行く支度を終え玄関から外に出る。

 「行ってきます」

 誰もいない家に一言言ってから。

 「あっやべ! 忘れ物!」

 思い出した俺はキャットフードをポリ袋に積めてバッグに入れた。

 「今度こそ行ってきます……だ」

 

敗北? 私はその言葉の意味を存じ上げません5

 

 学校に行くには市内電車に乗らなければならない。家から歩いて20分かかる。となり街は首都ということで賑わっているがこの町はなんでのんなにも田舎チックなのだろうか。

 「チックっていうのは何々っぽいって感じで使うんだぜ」

 「はいはい。いつもの独り言ご苦労さん」

 「それで俺はチャラ男チック?」

 「しらん」 

 「つれないねー」

 とことこ市電まで歩いているといつもの場所に段ボールが置いてあった。

 「お前達……まだ……」

道の脇に段ボールに傘がさしてあり段ボール箱に白い張り紙がしてある。『拾ってやってください』とマジックで大きく書いてある。

 「今日もご飯持ってきてやったぞ。そら食べなよ」

 段ボール箱に入っている子猫3匹に俺はキャットフードを食べさせてあげた。

 「少し昔の話になるんだけどな。ネコノミクスっていう現象が起きてさ。猫の経済効果は、凄いんだぜ? だからこの国の人達はみんな猫好きなんだよ。だからお前達は絶対に幸せになれるからさ。もう少し辛抱してくれよ」

 買ってあげれない俺がこんなこというなんて情けない。

 「博士に預ければいいんじゃないか?」

 「博士は優しいけど博士も大人だ。 研究所の人達がこいつらを施設なんかに預けたくない。駆除されたりする場合があるんだろ? 俺はそういうの嫌なんだよ。 親が子供を中絶したりさ育てるの放棄して子供を捨てる親。っていうか人間? そういうの嫌なんだよ。産まれてきたんだ。生きる権利があるんだよ」

 「嫌だから助けるのか?」

 「俺が手を差しのべられるなら努力する。それだけだ。宗教的なことを言いたいわけじゃない。特に義務感があるわけでもない。したいからやるんだ」

 俺は俺でありたいから。そしてまた子猫達に言う。

 「だからさ。てかお前達めっちゃ可愛いだろ? 俺みたいな半分グレてるような見た目のやつより絶対に風当たりいいはずなんだよ! 世の中そんな腐っちゃいないさ。またな。いやもう俺の前に現れてくれるなよ」

 俺はまた歩き出した。一週間前だったか? 段ボール箱が置かれるようになったのは。元飼い主よ。傘くらいさしてあげろよな。俺さんが傘さしてあげなかったら寒くて凍えてたかもしれないぜ。まぁ元飼い主もすぐに拾って貰えると思ったんだろうな。

 

敗北? 私はその言葉の意味を存じ上げません6

 

 学校に着いた。そして俺の在籍する教室に着いたので自分の席に着席する。誰も俺におはようと一つもくれない。俺もあげないが。

 俺はピアノの練習本を読むことにした。

 「おはよう! あっピアノの本読んでる! 感心だね!」

 隣でなんか言ってるやつがいるが無視だ。

 

敗北? 私はその言葉の意味を存じ上げません7

 

 放課後になった。まずい授業はついていけてるがピアノがさっぱりだ。めんどくさいが先生に頼んで居残りの相談をしよう。

 職員室についた俺は担任の講師に言った。

 「音楽室を貸してください!」

 「そろそろ来る頃かと思ったよ。鍵はちゃんと使い終わったら返してね? 見た目と協調性はあれだけど君は優等生なんだから留年はやめてよね?」

 「助かります」

 物わかりのいい先生だ。長居は無用ということで職員室を出て音楽室のドアを開けた。

 「鍵を渡された時点でわかってたけどさ自主練するのが俺だけって……」

 「好都合だろ?」

 「それでも俺だけがピアノ弾くの危ういって……ヤバくね?」

 「さっさと練習しろよ」

 言われて俺は練習を開始した。

 

敗北? 私はその言葉の意味を存じ上げません8

 

 もう何時間たったかわからない。俺は必死に鍵盤を叩いていた。すると手の甲にコインを乗せられた。とたんにコインが跳ねて落ちる。

 「えっ?」

 何が起こった?

 「努力家なんだね。応援しに来た」

 そこにはうるさいやつがいた。

 

鳩とオリーブの葉、付け加えるとするなら人間か 第11話 永遠の平和は人を弱くする。そして正義とは

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本作品の内容はフィクションです。
登場する人物・団体・地名等は架空のものであり、実在する人物・団体等とは一切関係がありません。

また本作品には過激な表現が含まれておりますが、犯罪にあたる行為など実際に行われますと、刑法により厳重に処罰されますので絶対に真似しないでください。

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第11話 永遠の平和は人を弱くするそして正義とは

 


 ただ事じゃねぇな。

 光一「すぐに向かう! ピース! お前は来ないほうがいい! 隠れていろ!」

 ピース「怖いのは嫌だっぴ! 隠れるっぽ」

 声「嫌な予感がする。博士の研究所が襲われるのはわかる。ヤバいもん研究してそうだしな」

 光一「ロボットに俺の剣。本当にヤバいのは博士が俺に頼ったことだろ?」

 全力疾走で研究者に向かう。心構えはしておいたほうがよさそうだ。

 声「迎撃システムも強そうだし」

 光一「ゲイシーか?」

 声「わからん」

 くそっ! なんだってんだ! またわからねぇことが増えるのか!?

  

永遠の平和は人を弱くするそして正義とは2

 

 研究所に着くと所々が破壊されている。アラームがうるさい。いったいどこに進入者がいるんだ?

 光一「着いたぞ。博士。侵入者はどこだ?」

 ネックレスから声が聞こえる。

 「光一がよく使う練習場じゃ!」

 光一「わかった」

 俺も能力に慣れてきたのか高速移動をした場合、あれだけ広いと思えた研究所内も狭く感じる。すぐに練習場に着いた。

 「歯応えがねぇなぁぁぁ! これで俺を足止めしてるつもりかぁぁぁぁぁ!」

 ロケットも銃弾も軽々かわす外国人っぽいおっさんが暴れている。

 「ははははははっ! 研究員? 博士ぇぇぇぇぇぇ? 聞こえてんだろぉぉぉぉぉ? 往生際が悪いんじゃねぇか?」

 かなり気性が荒そうなやつだな。目も口もつり上がっている。戦いを楽しんでいるのか? 観察してる場合じゃないな。

 光一「おい! おっさん! ここは俺の第二の家みたいなもんなんだよ。散らかすんじゃねぇ。 叩き出してやるよ」

 おっさんがこちらを振り向く。なんだこいつ? 剣幕が全く常人のものとは別格だ。目を合わせただけで逃げ出したくなる。格が違う。そんな気がした。

 「あっ? ガキが俺になんのようだ。 戦場にきちまえば大人も子供関係なくなる。忠告はしたぜ」

 気がつくと銃声が鳴りやんでいる。博士が迎撃システムを止めたのだろう。

 俺は剣を構え敵に駆け寄る。人間じゃ俺には勝てない!

 光一「はぁぁぁぁぁ!」

 敵に近づいた俺は剣を横に一閃する。

 「甘いなぁぁぁぁぁぁ」

 なっ! 避けただと!? 剣が重い。見えていても反撃出来ない。

 敵が懐に入ってきて。ボディーブローがまともに俺の腹に直撃した。

 光一「うっ」

 俺の体は吹き飛ばず、頭を押さえつけられ床に叩きつけられる。そしてサッカー選手のシュートの如くキックで吹き飛ばされた。

 「遊んでやるよ」

 光一「ごほっごほっ。」

 この威力……。確実に能力だな。

 光一「おっさん。その力」

 「あぁ最近使えるようになってな。使えるものはつかわなくちゃぁぁぁぁな!」

 接近してくる。先の攻撃を受けたことで俺の手から剣ははなれてしまっている。

 出来ることをしなければ。音速を使うしかない。全身に力を込めて音速パンチで迎撃する。

 敵が目の前。今だ!

 光一「うぉぉぉぉぉ!」

 全力を放った瞬間、俺の頬に痛みを感じる。

 そして俺は大きく吹き飛んだ。

 また俺は地面を舐めている。もうなんなのかわからない。

 「いやぁ勇敢だなぁ。力もないのになぁ。力は一応あるのか? それにしても俺に刃向かうとはなぁ」

 やばいな。俺の音速も通じない。化け物過ぎるだろう。

 光一「てめぇなんなんだよ!」

 「ジャックだ。名乗っていなかったなぁ? この国ではいちいち今からこの世にお別れを告げるやつに名前を名乗らないといけないのか?」

 光一「俺はこんなとこで倒れるわけにはいかねぇんだよ!」

 すぐに俺の体が横に飛ばされる。動体視力も弱まっている。何が起きているのかわからない。

 「見ると特に守るべきものもなく戦ってるように見えるなぁ。ガキ」

 光一「第二の家を守ろうとしてるじゃねぇか! それと俺は子供じゃねぇ! 」

 「俺が言いたいのは薄っぺらいって言っているだぜぇ。そんな覚悟じゃ何も守れやしない。戦争屋の先輩としてのだ。よく聞いておくんだな。俺は元傭兵だ。俺の祖国は核によって滅んだ。その時に妻も子供も失った。俺は核を落とした国が許せなかった。ゲリラにも参加した。軍を転々とした。だがな圧倒的な力の前では無力に等しかったさ。ただ俺にはな、才能があった。生まれついて動体視力がよかっただぜ? わかるか? 人をあの世に送る才能があったんだぜ。 核の存在が消えて軍事開発も進まなくなった。兵器が手に入り難くなった。殲滅兵器を開発した連中が世界から消えたから作ったら消されるんじゃないかと開発する連中も減った! だがな俺のように戦争を望む人間はいるんだ!  可能なら実行しなければならない! 不可能なら断行しやければならねぇぇぇぇんだよ!」

 蹴りを入れられる。

 光一「ぐはっ」

 「自らを価値なしと思うやつが真に価値がねぇんだよ! 俺はまだ価値がある!力なき復讐者に力を与えなければならない! 永遠の争いが人を強くし、永遠の平和が人を弱くする! 世の理がこれだ!」

 ジャックと名乗る元傭兵が言っていることは、真実だろう。でも俺は。

 光一「正論だ。でも俺はお前の言葉を真に受けるわけにはいかない! 平和の何が悪い! 嬉しいとき、楽しいとき、ずっとこんな時間が続けばいいな。って思うことの何が悪いってんだ!」

 「話しすぎたな小僧。俺も焼きが回ったな。せめて苦しまず終わりにしてやる。博士に見せつけないとな。正義は必ず勝つや悪は滅びるなんてのはなぁ。勝ったものが正義だからだ! 敗戦国は必ず悪になる! 俺はこの場において絶対的正義になってやるよぉ!」

 

永遠の平和は人を弱くするそして正義とは3

 

 視界からヤツが消えた。倒れているのは俺。

 さっきまで足を震わせていたのが嘘のようにヤツはそこに立っていた。色素が抜けた金色の髪ではなく漆黒の髪に。気づけば髪の色まで変わっている。

 「誰だお前。誰なんだよぉぉぉぉぉ!」

 もう小僧とは呼べない眼差しでジャックの前に立ちはだかっているのは……。

 「俺は俺であり、俺ではないものだ」

 

鳩とオリーブの葉、付け加えるとするなら人間か 第10話 カッコいい男になりたかったんだ

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本作品の内容はフィクションです。
登場する人物・団体・地名等は架空のものであり、実在する人物・団体等とは一切関係がありません。

また本作品には過激な表現が含まれておりますが、犯罪にあたる行為など実際に行われますと、刑法により厳重に処罰されますので絶対に真似しないでください。

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第10話 カッコいい男になりたかったんだ

 

 足が浮いて俺は数メートルが吹き飛んだ。地面に背中がついてもズザザザザザザザーっと音をたてて俺が滑る。

 光一「ごほっ! お前……なんだそのバカみたいな力は!」

 起き上がり様に俺は言う。

 ユウト「あーこれね。最近光に包まれてさ。力を授かったんだ。神からも愛されてるのかもね。僕さ」

 光に包まれた? 状況が上手く把握出来ないな。でも俺の能力よりは弱いな。

 ユウト「はぁはぁ。あれを食らって起き上がるなんてね」

 息が上がっている。許容限界が近いのか? 俺と同じ? まぁいいみぞうち狙いの今のパンチが全力なら遅すぎるにもほどがある。もういいだろう。

 光一「少し詳しく聞く必要がありそうだな。すぐに終わらせる」

 俺は地面を高速で蹴ってユウトに急接近する。音速はまずいな。俺の同じなら能力覚醒が最近ならキャパシティ(許容範囲)もそれほど大きくないだろう。赤子も同然だ。

 ユウト「なっ!」

 驚くのも当然だろう。俺のスピードは尋常じゃない。ユウトの近くまできた俺は前のめりに低空ジャンプした。そのまま音速を越えない程度に足に力を入れユウトの腹に蹴りを入れた。

 光一「お返しだ」

 ユウト「あああああああああああ!」

 ユウトは俺が吹き飛んだ比にならないほど大きく吹き飛んだ。死んでないよな?

 ユウトが起き上がった。杞憂だったようだ。

 ユウト「おおおおお前! 本当ににににに人間かよ!」

 盛大に怯えてくれちゃってるな。好都合だ。

 光一「まだやるのか? 1割も力出してないんだが? 少し本気を見せてやるよ」

 煽りってのは大事だよな。全身に力を入れ全開をイメージする。即座に俺は目の前の何もない空間。空気に右ストレートをかました。

 バァァァァァァァァン! っと轟音を響かせ回りに破壊をもたらした。少なからずユウトも吹き飛んでくれたようだ。素手で音速はあれから練習したおかげでキャパは越えなく打てるようになった。それとわかったのは能力は服にも影響があるらしい。ビリビリになって爆散しないのが何よりの証拠だ。博士に特製の靴なんて用意して貰わなくてもよかったわけだ。だけど効果範囲はあの大剣には及ばなかった。粉々になったし。

 ここまでやれば話す気にもなるだろう。

 光一「で? お前は何がしたかったんだ? 朝っぱらから嫌なもん見せやがってなぁ~」

 俺はユウトの元にゆっくりと近寄る。

 ユウト「ヒィ! 僕はなりたかっただけなんなだ!」

 光一「なにに?」

 ユウト「カッコいい男にさ!」

 光一「なんで?」

 行動のどこにそんな要素があったというのだろうか? あえて突っ込まず問いを続ける。

 ユウト「咲希にフラれてずっと考えていたんだ。モテる男は更にモテる。だからモテる努力をした。本命に振り向いてもらうために! 朝の演出はそのためだ! 今は咲希の隣にいるやつより俺のほうがカッコいいぞって知らしめるためにお前と戦った! カッコいい男になりたくて何が悪い!」

 光一「言っとくけどな。俺からみてもお前はまったくかっこよくなんかねぇぞ? モテるからカッコいい? あまりバカにするなよ。咲希はそんなやつに向き向かない。安く見るんじゃねぇぞ」

 何様なんだろうか俺は。

 光一「モテるから女を泣かせてもいいのか? 違うだろうが! カッコいい男なら惚れた女を幸せにすることだけを考えろよ! 見た目がカッコいい? オシャレ? 可愛い女連れてる? ふざけてるのか! カッコいいは外見だけじゃねぇだろうが! お前の朝した行動はカッコいい行動か? そんなわけない。人として最低だ。全くもってカッコいい生き様なんかじゃない 」

 言うこと言って俺は立ち去る。本当に口だけだよな。俺ってさ。

 

 夜になった。俺はいつも通り異形種薙ぎ倒してまわっている。博士の巡回カメラのバックアップは本当に助かる。ピースは戦闘時は家で待機だ。ユウトとの戦闘ではバッグの中にピースを入れっぱなしだったので正直危なかった。

 光一「あー自己嫌悪だわー」

 声「カッコいい男を力説したからな」

 思い出しても恥ずかしい。

 光一「カッコいい男ってなんなんだろうな」

 声「俺もわからねぇけど男なら一度は追い求めるんじゃないか?」

 光一「だよな。俺も追い求めてるから力説出来るのか」

 声「光一は教職者だからな。しっかりと教えないとな」

 光一「すでに正解がわかってることなら簡単だよ。未だに答えが出てないこと曖昧に教えるなんて先生としてもっとしっかりしないとな」

 声「なら大学いって教員免許でも取得すればよかったんじゃ」

 光一「俺は子供の成長の第一歩辺りの背中を押したかったんだよ」

 声「そっか。カッコいい男かどうか明日咲希にでも聞いてみたらどうだ?」

 光一「いいなそれ! 聞いてみるか!」

 明日が楽しみだ。

 

カッコいい男になりたかったんだ2

 

 光一「俺ってカッコいい?」

 朝である。出勤する途中、咲希にあったのでいきなり聞いてみた。

 咲希「ブサイク」

 光一「えっイケメン?」

 咲希「ぶさ……少しカッコいいかも」

 光一「えっ超かっこいい?」

 咲希「調子にのらない」

 いつもこんな感じだから冗談なんだか本気なんだかわからないな。まぁいいか。すると目の前からユウトが一人で歩いてきた。なんか俺を見つけると走って近寄ってきた。やっべぇー報復は唐突ですなー。

 ユウトが俺めがけて大声で言った。

 ユウト「弟子にしてください! 先輩!」

 光一「へっ?」

 咲希「ふぇ?」 

 

カッコいい男になりたかったんだ3

 

 お昼寝の時間である。もちろん園児の。

 光一「ユウトが年下なんて聞いてねぇぞ!」

 咲希「言ってないからね~。あはははははは」

 朝聞いた話によると、咲希とユウトはいわゆら幼なじみというやつらしい。最初は年が一つ離れているのでユウトも最初は咲希ねぇなどと呼んでいたという。ユウトが思春期をこじらせて咲希に告白して今のような感じに。心底どうでもいいなこりゃ。

 光一「それにしてもさ」

 咲希「弟子にしてってさ! 爆笑だねー」

 光一「めんどくさいのは嫌いだ! これ俺に限った話じゃないだろ!」

 咲希「こうちゃんはなんだかんだ言って面倒見いいじゃん? 遊びだと思ってさ?」

 光一「遊びで師匠? おかしいだろ?」

 咲希「てかなにやったの?」

 正直に答えたくねぇ~。

 光一「カッコいい男について力説した」

 咲希「あははははははははは!」

 爆笑である。つらっ。

 光一「男ってのは一度は憧れるもんなんだよ。女にはわからん」

 女心は俺達にはわからんけども男には男にしかわからんこともあるんだぜ?

 

カッコいい男になりたかったんだ4

 

 仕事が終わった。今はユウトとカフェナウである。ナウってのは今ってことな。

 光一「なんで俺が男とカフェらなあかんねん」

 切ないねー。俺の人生こんなんばっかかよ。

 ユウト「あの先輩もっと能力について教えて下さいよ!」

 光一「お前が悪い使い方するともわからん。断る」

 ユウト「先輩が近くにいれば大丈夫ですよ。僕ですね。女遊びやめたんですよ。かっこよくないなって思って」

 光一「そっか別に女の子と付き合うことに俺はとやかく言うつもりはない。けどな泣かせるのは良くないな」

 ユウト「はい!」

 光一「しょうがないな。少し教えてやる。能力についてわかっているのは許容範囲があることだ。それを越えると立ちくらみみたいなのが起きる。最悪の場合は倒れる。毎日コツコツ使うことによってそれが広がる。ユウトも知ってると主な効果は身体強化だな。まぁ能力が同じともわからんから参考にな」

 ユウト「詳しいんですね! いつ頃覚醒しました?」

 覚醒とか中二臭い表現するんだな。

 光一「最初からだ。だからユウトが光に包まれたのは初耳だ」

 ユウト「最初からって!? 僕が勝てるはずないじゃないですか!」

 光一「そういうことだ。能力についてはまだまだ知らないことばかりだがな。なんでこんな平和な世の中なのに……」

 不思議に思わないわけじゃない。殲滅兵器がない世の中なんて昔の人間にとっては願ってもないことなんだろう。でも俺には圧倒的な破壊の力が生まれながらある。これって世界が破壊を欲している? そんなわけない。絶対理由があるはずだ。

 光一「今日の夜時間あるか? 世界の異変もついでに教えてやる」

 ユウト「世界の異変? ああでしたら連絡先交換しましょう」

 

カッコいい男になりたかったんだ5

 

 ユウト「なんなんですか!? こいつらぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 いつもの深夜徘徊にユウトも連れ出してみた。異形種はこちらが手を出すと途端に襲いかかってくる。こいつらがいつ一般市民を襲うかもわからないので駆除してるわけだ。

 ユウト「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ」

 ユウトが駆除されそうなので助け船を出した。もちろん愛剣でだ。横に一閃。

 とたんに爆風が吹き荒れる。

 ユウト「なんなんですか!? その鉄の塊は!?」

 光一「秘密だ。それとな絶対に咲希には能力の事とこいつらのことは内緒にしろ。知って特することなんかじゃない」

 ユウト「わかりました……。非現実の連続で頭がついていきません」

 光一「そのほうがいいだろ」

 俺だって普通がいいんだよ。本当はさ。

 

カッコいい男になりたかったんだ6

 

 駆除が終わってユウトはうなだれて帰っていった。

 ピース「人間って力持ちっぴねー」

 最近、ゲイシーも現れないしピースも連れてきている。人間見たいというのに人間みせてないけど。

 光一「普通の人間はこんな力でねぇよ」

 声「不思議だな」

 光一「お前もな」

 声「照れる」

 褒めてねぇし。

 光一「帰るか」

 その時、携帯が鳴った。

 博士からだ。

 「助けてくれ! 光一! 研究所が襲われておる!」

 

 

鳩とオリーブの葉、付け加えるとするなら人間か 第9話 男には譲れないものがある

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本作品の内容はフィクションです。
登場する人物・団体・地名等は架空のものであり、実在する人物・団体等とは一切関係がありません。

また本作品には過激な表現が含まれておりますが、犯罪にあたる行為など実際に行われますと、刑法により厳重に処罰されますので絶対に真似しないでください。

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第9話 男には譲れないものがある


 光一「博士? 急に呼び出してなんだよ?」

 咲希にいたずらしてからもう一ヶ月たった。ゲイシーの人形は依然として夜徘徊している。それに加えて騎士っぽい何かとも戦った。人形も騎士も能力無しでは話にならないほど強い。能力使っても素手だとなかなか倒れてくれない。大剣でも一撃では倒せない。

 博士「最近電波障害が激しいんじゃ」

 光一「そういえばそうだな」

 人形とか騎士とか博士が言うのめんどいんじゃ! とか言い出したので名称は異形種と名付けた。異形種は目立った行動はしない。俺が攻撃すると反撃してくるといった具合だ。それに加え俺がゲイシーと戦った翌日から世界規模の電波障害が起きているらしい。テレビ観ないし特に携帯電話も使わねぇから気にしなかったわ。保育園では咲希が電波障害で通話切れるとかなんとか言ってたな。途中から聞いてねぇからわかんねぇな。

 光一「あれって一瞬だろ? 気にするのことか?」

 博士「全世界同一タイミングじゃぞ?光一や。なにか良からぬことが起きるやもしれん」

 光一「覚悟しておくよ」

 嫌なこととか起こってほしくなんてないんだが。

 

男には譲れないものがある2

 

 保育園に行く途中、咲希とあったので一緒に仕事に向かうことになった。咲希は俺の家を知っているが俺は知らない。咲希が俺の家を知っているのは俺が不覚にも咲希にストーカーされたからだ。家に押し掛けてきて専門学校の友達が結婚するとかでビデオレター撮るからあがらせて! と強引に迫られて友達でもないやつの結婚式を祝う発言を求められた。いやなんて言うか咲希は俺の家知ってるくせに俺は咲希の家知らないっていうのが不公平だなぁーって思っただけ。

 咲希「るーんるーん」

 光一「なぁ二十歳越えてるのにるーんるーんとか声に出して歩くのやめてくれない? めっちゃ恥ずかしいだろ」

 咲希「私と一緒に歩くのが恥ずかしいって!?」

 光一「いやそういうわけじゃねぇけど」

 たわいもない会話してると目の前にカップルがこっちに歩いてきた。そして男のほうが喋りかけてきた。

 男「ちょっとそこのお前。なに咲希の横歩いてんの?」

 咲希「優人じゃん! 久しぶり!」

 男「咲希さ? 誰とも付き合わないんじゃなかったの? 俺を振る口実だったわけ?」

 咲希「……」

 明らかに咲希が困った顔をしている。

 光一「ユウトだっけ? 咲希さんめっちゃ困った顔してるぜ? 女の子困らせるの良くないんじゃないのか? 隣にいる女の子暇してるぜ?」

 助け船を出したつもりだ。俺は気が利かないから珍しい。

 ユウト「こいつは遊びだよ」

 おい。こいつ今なんていった。

 女「ひどい!優人!ねぇ冗談だよね?」

 ユウト「なわけないだろ? 消えろブス」

 こいつ!

 女「あっ……ひぐっ……あああああああ」

 女は泣きながら去っていった。

 光一「お前さユウトって言ったな? 字で書くと優しいに人か?」

 ユウト「そうだよ? 優しいに人で優人」

 こんなやつがいるのが許せない。俺だけか?

 光一「お前さ完全に名前負けしてるぜ。くずやろう」

 ユウト「ケンカ売ってるの? 買うよ?」

 俺にもし能力が無くても。

 光一「売ってるに決まってるだろうが!」

 頭に血が上っている。水をかけるように咲希が口を挟んだ。

 咲希「こうちゃんだめ!ユウトは運動神経抜群でしかも頭もいいし金もちだし……勝てないよぉ」

 水をさされた気しかしなかった。

 光一「男のケンカに女が口挟んだらダメなんだぜ。知らなかったのか?」

 ユウト「橋の下っていったらわかるな? 18時だ。逃げるなよ」

 光一「話がわかるようで結構だ」

 無言で通りすぎる。咲希とどんな関係にあったかは知らないが俺はあいつが許せない。能力を使って軽く小突いてやればいいだろう。

 

男には譲れないものがある3

 

 保育園の仕事時間だ。今は自由遊びの時間。

 幸一「今日はお絵かきして遊ぼうぜ! そこのアホなお姉ちゃんと天才の俺の似顔絵描いてや!」

 自由遊びの時間は大切だ。この遊びの時間を通して園児達の成長を見なくてはならない。基本的には自由遊びの名の通り好きな遊びをしてもらう。けど俺は遊びを指定することがある。楽しむのは大前提として知らない遊びをし感心も増やしていかなければならない。遊びは自己表現を増やせるし遊びだって学びだ。園児達のケンカや苛めの目を摘むのは大変だけどな。安全教育を徹底しなければ。

 そんな事を考えていても朝の事を思い出すと苛立ちがつのる。笑顔を園児達に!

 園児(男)「兄ちゃんなんかニコニコちがくね」

 咲希「キモいね~」

 表情筋鍛えなきゃな……。

 光一「俺の顔のことはどうでもいいの! さー似顔絵やるぞー!」

 園児達「おー!」

 ノリが良くて助かる。子供は無邪気だ。最初から悪い子なんていないと思う。親、先生、友達そういう様々な影響によって変わっていくんだ。環境が性格を作るとはあながち間違いじゃないと俺は思う。

 

男には譲れないものがある4

 

 似顔絵遊びが始まって数分たった。

 光一「そろそろみんな描き終わったんじゃないかな? 咲希! 見てまわろうぜ」

 さぁーてイケメンに描けてるかな~?

 咲希「いいよ。いこっ!」

 子供の描く絵で心理状態がわかるらしい。似顔絵はどうなんだろうか。まず一人目。俺を毎日カッコいいと言ってくれるあきくんからだ。

 光一「めっちゃうまく描けてるじゃん! 俺がただの金髪じゃなくて色素が抜けた白っぽい金髪なところがいい! ただの金髪はギラギラしてて俺も嫌だからなぁー。顔もイケメンだ。 ピアスもキレイに描けてる! 将来が画家さんかな?」

 園児の絵あなどるべからずだな。俺より上手いもん。

 咲希「こうちゃんこんなイケメンじゃないし。この絵のこうちゃんホストみたいで1割り増しチャラ男だし」

 失礼な! てか1割増してホストみたいとかどうなんだろうか。チャラ男じゃないのに……。

 心理状態ね。俺のことよく見てくれてるってことかな。素直に嬉しいぜ。

 次は咲希のことが好きな女の子だ。まきちゃんの絵はどんなのかな?

 光一「あははははははは! ホラー映画に出てくる女みたいだ! これはツボったわ」

 あっちなみにツボるの意味は笑いのツボにハマるということらしい。俺もなにいってるかわからん。

 まきちゃん「咲希お姉ちゃんはいつも髪後ろでまとめてるでしょ? おろしたの描いてみたの」

 ポニーテールとか後ろまとめてない姿を想像して描いたみたいだ。きっと見たいんだろうな。

 光一「その髪の後ろについてるシュシュだっけか? とってあげれば? 」

 咲希「これはだめ! 若者っぽく後ろでまとめてるの~。おろしたらキレイ系に見えるかもでしょ? 間違えたら老けて見えるかも」

 光一「しらん」

 咲希「ひどーい! とにかくダメなの!」

 めんどくせぇー。シカトだ。次行こう。

 俺にモテの極意を聞いてきたマセガキことしゅんくんの見てみよう。

 光一「棒人間が二人……。なんじゃこりゃ? 一人なんか倒れて泣いてる? のか?」

 さっきのもそうだが想像して描いた。似顔絵じゃねぇだろって思うけど子供の絵だ。それは許そう。棒人間はあんまりだろうに。

 光一「しゅんくん? それなに?」

 聞くしかないよな。

 しゅんくん「咲希が光一お兄ちゃんに告白してフラれて泣いてるの。滑稽でしょ?」

 鬼かこいつは。

 咲希「わわわわわわわわたしは! こうちゃんなんかに告白なんてしない!」

 キョドってる……。挙動不審の略だ。

 光一「子供の描く絵だぞ? そんな慌てなくてもいいだろ。それと地味に傷付くからやめて」

 なんかとか失礼だし。勢いで言うにしても言葉選べよ。

 光一「いや~しゅんくん? フルとかフラれるとかの絵を描くのは自由だよ。でもな女を泣かせるやつは男じゃねぇよ。気をつけてね? そんな大人になっちゃダメだ。」

 これも学びだ。悪い大人にならないように俺がしっかり教えていかなくちゃならないんだ。

 咲希「そんな大人になっちゃダメね~。そんなこうちゃんは良い大人? 専門学校の時、友達作ろうとしなかったじゃん。」

 光一「うっ……。専門学校時代はまだ18~19歳の話だろ? まだ子供だ。」

 咲希「物は言い様だよねー。口が達者なことで」

 嫌味ったらしく言ってくるな~。しょうがないじゃないか。能力があるんだからな。力加減ミスったら大変な事になってしまう。

 

男には譲れないものがある5

 

 今日の保育園も楽しかった。仕事が楽しいってのは大人の世界じゃかなり珍しいほうらしい。まぁ保母さんは給料がめっちゃ少ないだがな。俺には博士の加護があるから安心だけど。

 咲希「こうちゃん! また明日~」

 光一「はいはい。じゃあな」

 咲希が仕事を終えて帰っていく。朝のことは忘れたのか普通である。20歳越えて天然ってのはどうなんだろうか。

 給料が少ないか。咲希はまともに暮らせているのだろうか。

 光一「今度何か奢ってやるか」

 声「咲希にか? 優しいねー」

 光一「うるせぇよ」

 ピース「これからケンカするっぽ? 良くないと思うっぴー」

 ぽやらぴやらなんなのこいつ。

 光一「男にはな譲れないものがあるんだよ」

 声「昔っからケンカなんかしなかったくせによくいうぜ。見た目やら無愛想やらで何回も絡まれてボコられてるくせによー」

 そうなんだよな。争い事なんて本来避けるべきだ。

 光一「何回も死ぬかと思ったさ。でも能力で痛みは緩和されるだろ? 気絶して博士の元で治療受ければなんとかなっただろ? でも『この前のお返しにきたぜ』とか俺をボコっておいて大勢でくるやつらはやめてほしかったな」

 声「あれは俺もおかしいと思ってた。なんかしたのか?」

 光一「してるわけないだろ」

 世の中わかんないことだらけだ。特に俺だけって話でもないだろう。

 ピース「ケンカしてこなかったっぴ? 男には譲れないものがあるっぴねー。 そんなに襲われてるなら今回が初めてって流石におかしくないっぴか?」

 だよな。やっぱそう思うよな。

 光一「今回は特別なんだよ。俺だけがあの光景をみたならこうはならなかった。だけどな。咲希の目の前であんなことするのは許せねぇんだよ」

 俺が園児にいろいろ教えるように。咲希にもあんな大人になってほしくなかった。咲希は良い子だと思う。だって唯一の友達なんだから。俺の友達になろうだなんて物好きなんだから。

 光一「大人に何か教えたいってのは偽善かもしれねぇな。なんてつぶやいてみる」

 ピース「僕はいつでも呟いてるぴー!」

 あーうるさい。

  光一「勝手にさえずってろよ。それともっと鳥なら可愛く鳴け」

 さえずりの略である。ちなみにさえずりとつぶやきは同意語で鳥の鳴き声だ。 

 ピース「可愛くなくって難しいっぽ」

 可愛くなく……ね。朝のあれは悲痛の泣き声だろう。

 光一「許せるはずがねぇだろうが!」

 ピース「なんかキレてるぴー!」

 ぶちギレだこの野郎!

 

男には譲れないものがある6

 

 少し予定より速く橋の下につきそうだ。人が来ないな。この町は小さい。橋と言ったらここしかないだろう。橋の下を見ると俺よりも速くユウトとかいうやつがいた。心の中でも優人と呼ぶには至らないクズ野郎だ。

 ユウト「速いね。僕とそんなにケンカがしたかったのかい?」

 舐めくさったような声。

 光一「ああそうだよ。俺がこんな暴力的な性格だったとは俺自身でも驚きを隠せないな」

 一応能力の痛覚緩和で先手を打たせるか。ケンカは正当防衛にしなければな。誰が見ているともわからない。この国ではケンカは先に手を出したやつが悪いと言われるからだ。

 光一「さっさと始めようぜ。先手を打たせてやる。なに大人の余裕ってやつだよ。お前の一撃なんて大したもんじゃねぇだろ? そら来いよ? どこでもいいぜ?」

 わざと挑発する。頭に血をのぼらせて正当防衛の四文字を忘れさせるためだ。

 ユウト「舐めてるのかお前? 咲希から僕が運動神経抜群だって聞かなかったのか? お前なんて一撃で沈めてあげるよぉぉぉぉぉ!」

 ユウトがこちらに向かって走ってくる。俺は構えなんてものはしない。守りなんていらないだろう。

 ユウトが俺の目の前で足を止め殴る体制に入った。大きく体を横に振りかぶって拳を強く握りしめている。みぞうち狙いか。常人なら確かに一撃もあり得るだろう。だが俺は少し異常人だからな。

 ユウト「ふっ!」

 ユウトの拳が俺の腹にめり込む。んっ? めり込む?

 光一「ぐはっ!」

 俺の浮いた。痛い。この力は……。俺と同じ能力だっていうのか!?

 

鳩とオリーブの葉、付け加えるとするなら人間か 第8話 なんていうか平和的な

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本作品の内容はフィクションです。
登場する人物・団体・地名等は架空のものであり、実在する人物・団体等とは一切関係がありません。

また本作品には過激な表現が含まれておりますが、犯罪にあたる行為など実際に行われますと、刑法により厳重に処罰されますので絶対に真似しないでください。

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 第8話 なんていうか平和的な

 

 前回のあらすじ!寝ようとしてた俺にまさかの呼び鈴連打!あーうざーめんどくさーって感じだけどうるさくて寝れん俺は玄関のドアを開けた。目の前には黒装束5人衆!いきなり「キシャャャャャャャャ」なんて言い出しやがった!どうする俺!てかどうなるの俺!激動の今回のお話!篤とご覧あれ!

 光一「ギャァァァァァァァ」

 一瞬意識飛んだぞ!稲妻のようにスピード感のある驚愕を肌に感じてしまったぜ。マジでなんやねん。

 黒装束の1人「アハハハハハハハハハ」

 ヘリウムガスを吸ったような声。これはソニックブームの出番か? いや俺の家が吹き飛ぶし腕のみで放てるかわからん。

 ここは。

 光一「寸止めジャブ」

 そう言って寸止めジャブを目の前の黒装束に放った。手加減を忘れているのかそれだけでドンッと大きな音がした。

 黒装束5人衆がガクブルである。いやめっちゃ震えてる。流石にかわいそうになってきた。しかし容赦はしない! ビビらされたからな! 決めセリフでも吐くとしよう。キメ顔でな!

 光一「Get out of my sight! Before I change my mind」

 ゆっくり解説も入れとこう。

 光一「これは外国語でな、訳を教えてやる。視界から失せろ!オレの気が変わらないうちに」

 決まったぜ。一生に一度は言ってみたかったが最適なタイミングで言えるとはな。

 黒装束5人衆「ヒィィィィィィィ」

 逃げていった。一目散ってやつだな。だが一人残っている。そいつがマスクを取った。思わぬ人物がその顔を見せた。

光一「咲希……」

 咲希である。

 

なんていうか平和的な2

 

 光一「バカなんじゃねぇの?」

 心底呆れた。咲希は最近俺が怖い顔してるからという理由でびっくりさせたかったらしい。

 咲希「だってぇ~」

 ヘリウムガスが抜けたいつもの咲希の声でだってぇ~とか言っている。

 光一「アホなの?」

 今、俺は咲希を家にあげて土下座の体制をとらせている。俺は腕を組んでいる。マジ鬼畜俺!

 咲希「怖い顔ばっかり! 似合わないったらありゃしないじゃない! いつも園児にむける笑顔はどこいったの! 優しい顔も全くしてくれない! 嫌だよ! そんなの!」

 何て言えばいいか……。女の子にそんなこと言われることなんてあんまりないし。てか俺の話し相手は謎の声と咲希とピースくらい。少し面食らってしまった。

 光一「嫌なのはわかったからさ。とりあ驚かしたの謝れ」

 咲希「ごめんね。けど驚いたこうちゃん可愛かったよ!」

 反省の色が見えねぇ。なんなのこの人。

 光一「かわいいは男に使う言葉じゃねぇし。褒め言葉と勘違いしてんの?」

 咲希「決めセリフ言ったこうちゃんキモかった。顔なんか完全にキマってたね。薬物中毒者の顔?イッちゃってたねー」

 光一「謝る気ねぇだろ!」

 こいつ喧嘩しにきたのかよ。

 光一「はぁー」

 盛大にため息つく俺。すると咲希が真剣な顔して俺をみた。

 咲希「こうちゃん」

 じーっと俺の顔を凝視してくる。ちょっ! 顔が近い! 咲希の顔はノーメイクなのにそんじょそこらの美女よりもかわいいと思う……。いやこれは俺個人の感想だけではなく専門学校の時もめちゃくちゃモテてた。アイドルの美姫並みに可愛いんじゃないかとたまに思ったりする。マジでたまにだが。これでメイク無しは反則だろ。美姫でもメイクしてるらしいのに。なんせメイクのやり方とか人に教えれるほどメイクが上手いらしい。アイドルなのにな。

 光一「なんだよ」

 流石に顔が近すぎるので顔を反らす。

 咲希「照れてるぅぅぅぅ! かわいい!」

 顔が熱い。

 光一「女の子に耐性ねぇだよ! そういうのやめなさい! 」

 勘違いしたらどうすんだよ。ダメだろ。

 咲希「あはははははははははは」

 なぜか爆笑する咲希。その顔があまりに無邪気でさ。

 光一「ぷっあははははははははは」

 なんでか俺もつられて笑ってしまった。

 咲希「笑顔がやっぱり一番いいよ! あはははははは」

 怖い顔よりはいいかもしれない。咲希の笑顔を見てそう思った。

 咲希はもうすぐ寝る時間とのことで帰った。さて復讐の準備をするとしよう。いやはや楽しみだ。

 

なんていうか平和的な3

 

 2日がたった復讐決行の時である。

 いつもより早めに起き支度をし出勤した。咲希の下駄箱にあるものを仕掛ける。やつなら必ず引っかかる。

 

 咲希が出勤してきた。物を手に持っている。物にはメッセージカードが付いている。内容は。

 「2日前は驚かせやがったな? でもさ咲希のおかげで元気が出たよ。だからお礼としてチョコ作ったんだよ。生チョコトリュフってやつ だからさ。ただのチョコボールと違うんだぜ? バレンタインチョコ貰えたら作ろうと思ってたんだ。いや面と向かって言うの恥ずかしいじゃん? 俺のせめてもの感謝の気持ちってやつだぜ? 受け取って貰えると嬉しい。 一応保冷剤入ってるけど味落ちたら嫌じゃん?すぐに食べて感想くれよ。by光一」

 完璧だ。策士だな俺はよぉぉぉぉ! 我ながらかなりゲスいと思うが俺を驚かせたお前が悪い。

 ガラスに薄く映った俺の顔が下品な笑いを隠しきれてなかった。すると。

 咲希「うぎゃゃゃゃゃゃゃ!」

 咲希の悲鳴が聞こえた。もう女の子の悲鳴じゃねぇだろこれ。

 咲希「こうちゃぁぁぁぁぁぁん!」

 やっべぇ!鬼気迫る表情で俺を探している。

 咲希「許さない許さない許さない」

 なんか呪詛の念みたいなの唱えてるし。

 これは早退するしか……。

 園児達「兄ちゃんを捕まえろー!」「咲希ねぇ泣かせやがって!」

 マジか! 園児達まで!逃げっ!

 咲希「見つけた」

 咲希さんめちゃくちゃ怖いんですが……。

 ここは切り札を使うしかねぇ!

 光一「あれはな……驚かされた仕返しってやつなんだ」

 素直に謝る。

 光一「ごめんな。流石にやり過ぎたと思ってる。チョコにコブラチリ入れるやつなんか頭おかしいよな。しかも女の子に渡すなんてさ。咲希の唇がタラコみたいになっちまってる」

 流石に俺もやり過ぎた。

 咲希「どうしてくれるの! 謝ったって許さないんだから!」

 ぶちギレの咲希さん。でもな俺にはこれがある!

 光一「謝っても許してくれるなんて思ってないさ。だからさ本当の感謝の印ってやつ持ってきたんだ。咲希はメイクしないじゃん?スッピン美人ってやつじゃん? だからもっと顔キレイになってもらおうと思ってさ」

これを作ったんだ。

 光一「精製水とグリセリンと肌に良いものブレンドした俺のオリジナル化粧水だ! 咲希のためを思って作ったんだ」

 咲希「本当に私のため?」

 光一「うん」

 咲希「私のためだけに?」

 光一「知らないことばかりでさ勉強しながらだったから2日かかっちまった」

 咲希「嬉しい」

 心のそこから嬉しそうな顔だ。作った甲斐があったってもんだ。ただ明日会いにくいな。こんなに喜ばれたらな。

 

なんていうか平和的な4

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だってあれにはハッカ油が混ぜてあるんだから。あっちなみにハッカ油はメンソールの原液みたいなもんな! めっちゃスースーするぜ! もはや痛いぜ!倍返しにしなくちゃな!二段構えですたい!コブラチリってのは激辛ソースのことね。

 

 翌日。

 咲希「なんなのよもーう! 喜び損じゃない! こうちゃんのばかー!」

 夜、顔に塗ったんだろうな。俺も試したがあれはヤバい。

 なんていうか平和的な日常だ。こんな日がずっと続けばいいのに。そんなのは無理だってわかってる。能力のこと。ゲイシーのこと。しゃべる鳩ことピースのこと。謎の声のこと。思い出したくなんかない。でもそんなの無理だ。俺はこの能力を持って生まれてきてしまったんだから。普通なんかじゃいられない。

 

鳩とオリーブの葉、付け加えるとするなら人間か 第7話 キャラ設定が弱い

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本作品の内容はフィクションです。
登場する人物・団体・地名等は架空のものであり、実在する人物・団体等とは一切関係がありません。

また本作品には過激な表現が含まれておりますが、犯罪にあたる行為など実際に行われますと、刑法により厳重に処罰されますので絶対に真似しないでください。

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第7話 キャラ設定が弱い


 また博士の研究室のベッドに横たわっている。

 博士「いい朝じゃの光一。グッドモーニング!」

 光一「なんで生きてる?」

 博士「わしのロボットが落下しとる光一をキャッチ!」

 あぁそういうことね。博士のロボットに助けられたわけだ。

 光一「ありがとう」

 博士「どういたしましてなんじゃがまた取り逃がしたの~」

 そうだった。全力の大剣素振りで放った空気爆発ですら仕留めれなかった。

 光一「かなり手を抜かれてる気がした。まだ足りないのか……」

 博士「策を練り直すしかないのぉー」

 光一「それと能力の強化か」

 ほぼ毎日能力を使っているからわかるのだが使い込むほど強くなるらしい。ちなみに今だと空気爆発、名付けてソニックブーム一撃でキャパ越えて能力解除される。身動きは出来ないし。乱用は出来ないな。

 光一「てかあの剣さ全力で振ったら粉々になったぞ」

 博士「わしの最高傑作が……」

 ドンマイってやつだ。

 

 キャラ設定が弱い 2

 

 咲希「最近怖い顔ばっか! どうにかならないの! その顔」

 今は保育園の仕事の真っ最中。園児の昼寝の時間だ。この時間、咲希と俺は超暇である。

 戦闘後翌日なのでヘトヘトだからあんまり仕事はしたくない。

 光一「してねぇし! それと失礼だとは思わねぇのかよ」

 咲希「こうちゃんとは無礼講~」

 暇なのだが俺と咲希はパソコンの前で事務仕事している。事務仕事とは聞こえがいいがタッチタイピング(キーボード見ないで文字打ち)が出来るようになってからは仕事と思えないほど楽である。

 光一「なんか面白いことないかなぁー。よし! 決め台詞でも考えよう」

 主人公キャラ的なの欲しいんだよなぁ。俺さん弱すぎね。

 咲希「また意味わかんないこと言ってる」

 いや俺さん決めセリフとか今まで言ってねぇし。言うべきだろこれは。咲希はシカトだ。

 光一「Get out of my sight! Before I change my mind(げったぅと おぶ まい さいと びふぉぁ あい ちぇんじ まい まいんど)」

 咲希「こうちゃんが壊れた」

 光一「外国語だからな? さぁなんて言ったと思う?」

 咲希「わかんない」

 決めてやるぜ!

 光一「視界から失せろ!オレの気が変わらないうちに」

 咲希「女の子にそんなこと言うとか最低!」

 決めセリフは使いどころ間違えるとあかんな。

 光一「決めセリフの練習じゃん! 暇なんだからいいじゃねぇか!」

 咲希「マジ子供、大人になって何言ってるんだか」

 ブチッ!血管が切れるような音がした。

 光一「お前はババァだろ! いつも眠い眠い言ってるし21時には寝るんだろ!」

 咲希「ババァとかいっちゃダメ! おばあちゃんでしょ? それと寝る時間は私の勝手だから!」

 光一「うるせぇ! ババァ!」

 咲希「口汚い! だから園児にも口調がうつるんだよ! クレームきたらどうするの!」

 また咲希と口喧嘩が始まってしまった。原因なんてもう忘れた。

 

キャラ設定が弱い3

 

 光一「バカバーカ!」

 咲希「バカバカバカバカバカバカ」

 帰る時間になってもこれである。帰ろ。

 帰る支度を済ませ帰路につこうとしたその時。

 咲希「バカこうちゃん! また明日ね。楽しかったよ」 

 そんな声が後ろから聞こえた。シカトしよ。

 歩くこと数分いつもの独り言を呟いた。

 光一「帰り際にあんな声であんなこと言われたら嫌いになんてなれるかよ」

 声「ひゅーひゅー」

 謎の声がうざい。

 ピース「ひゅーひゅーっぽ」

 光一「うざいわ~」

 ピース「咲希のこと好きっぴか?」

 光一「呼び捨てやめろ。っぽなのかっぴなのかはっきりしてくれ」

 なんか咲希のこと呼び捨てにされると腹立つな。なんでかは知らねぇけど。昨日は疲れたから巡視は博士のカメラに任せて今日は咲希を見習って寝るかぁー。

 

キャラ設定が弱い4

 

 家に帰って飯食いシャワーからのベットイン!

 光一「こんなに速く寝るの久しぶりだわー。朝はいつもだるいし~。きっと不眠ぎみなんやな~」

 声「早寝早起きは三文の徳だ。三文とはごくわずかなって意味らしい」

 ピース「暇っぽっぽ」

 こいつら……。

 光一「声は解説ごくろう。ごくわずかしか得ねぇのかよ。ピースはそこらたへんの本でも読んでろ。俺はわりと読書家だった時期あるから本ならある。俺は寝る」

 おやすみなさーい。

 「ピンポーン」

 寝ようとしたらインターホンが鳴った。やめて呼び出し音。俺は居留守する。いるのに出ない。

 「ピンポーンピンポーンピンポーン」

 うぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!

 はいはい! 居ますよ! 出りゃいいだろ!

 何時だと思ってんだ! まだ20時だ……。

 玄関のドアを開ける俺。

 光一「どなたですかー。ピンポーン連打やめてくださーい」

 ドアを開けて待ち受けていたのは。黒装束をまとった人が5人。

 光一「へっ?」

 すっとんきょうな声をあげる俺。そんな俺めがけて黒装束の5人が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒装束5人衆「キシャャャャャャャ!」

 

 

 

 

 

 

 

 光一「ギャャャャャャャャャャ!」

 何が起こった!?

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