鳩とオリーブの葉、付け加えるとするなら人間か 第21話 オープンコンバット&エンゲージ
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本作品の内容はフィクションです。
登場する人物・団体・地名等は架空のものであり、実在する人物・団体等とは一切関係がありません。
また本作品には過激な表現が含まれておりますが、犯罪にあたる行為など実際に行われますと、刑法により厳重に処罰されますので絶対に真似しないでください。
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第21話 オープンコンバット&エンゲージ
音速で追いかける。捕らえられない。
光一「化け物かよ!?」
このままじゃキャパオーバーする。急いでユウトと悠愛にコールした。二人とも快く引き受けてくれた。
声「なんであいつは美姫ちゃんをさらうんだ」
光一「知るか!」
訳がわからん。いきなりすぎるだろ。
唐突に鎧の男が立ち止まった。
光一「観念しろよ。コスプレ野郎!」
鎧の男はこちらを向いて言った。
鎧の男「ゲイシー?」
今なんていった?
「はっははははははハッ! 頼み事とは珍しいデスネェ? ガラハッド?」
どこからともなくゲイシーが現れた。こいつ!
光一「なんでお前が今さら!」
ゲイシー「久しぶりデスカネー? アハハッ!」
ふざけた野郎だ! こうなったら二人まとめて!
ガラハッド「足止めだ」
逃げるつもりかよ!? そう易々といくかよ!
ゲイシー「誰にいっているのでスカァ~? 一度も私に勝ったことがないクセニ? まぁいいでショウ」
俺の前に立つゲイシー。まずい。こんな時に現れるなんて……。
ユウト「お待たせしました!」
悠愛「ごめん! パパ! 遅れた!」
二人が駆けつけてきてくれた。頼んでいいのか? 相手は化け物だ。
光一「少し耐えてくれるか……? 相手は強いなんてもんじゃない規格外だ」
俺はピエロを見た。
ゲイシー「アハハハハハハハハ!」
狂ったように笑ってやがる。
光一「あいつは人をも食べちまう化け物だ。それでも俺は美姫を追わなければならないんだよ」
そうだ。あいつと二人を戦わせてはいけない。でも。
ユウト「ええ!? 美姫ってあの美姫ちゃんですよね!? アイドルの」
光一「そうだよ。事情は事が済んでからな? 友達として紹介してやるよ」
そういや二人には言ってなかったな。てか言えるかよ。どこで情報が漏れるかわかんないんだ。
悠愛「……」
悠愛はゲイシーの姿を見てから声を失っている。あのおぞましい姿を見ればそれは当たり前の反応だろう。
光一「悠愛。戦えるか? 帰ったら女の子の友達を一人紹介してやるよ。凄く可愛いんだぞ?」
悠愛「大丈夫……。あはは……。嬉しいな」
どうも歯切れが悪いな。でも。
光一「博士! 聞こえてるな! ここに武器を二本頼む! 大至急だ!」
俺もやつを追わなければならない。
コンテナが降ってきた。俺に向かって射出された武器を二本キャッチする。大剣とナイフだ。
光一「これはユウトに。あんまり振るな。すぐにキャパオーバーするぞ。重いからな」
大剣をユウトに。
光一「悠愛はこれだ。ユウトのアシストだ。やばくなったら二人で逃げろよ。俺のしてあげれるのはこれくらいしかない。ごめん。それとありがと」
二人に礼を言う。無茶なお願いをしたんだ。
ユウト「帰ったら美姫ちゃんとおしゃべり!」
こいつもミーハーかよ。
光一「そうだ。いくら女慣れるしてるお前でも一瞬で惚れるぞ。やらんが」
ユウト「えっ? やらん……? もしかしてもう! 手が早すぎますよ!」
ヤベッ! ガチで間違えた!
光一「言葉の綾だっての!」
ユウト「咲希ねぇ一途だと思ったら悠愛ちゃんといい美姫ちゃんといい! 見た目通りのチャラ男だったんですね!」
光一「うるさいわ! ボケぇ! 帰ったら説明するからな! ちゃんと守れよ! 男を見せろ」
そして俺は後を追おうと。
ユウト「わかってますよ。先輩がいなくても男を貫き通す。先輩は外国語好きでしたよね。なら……オープンコンバット! (戦闘開始)」
そうユウトが言った。外国語はカッコいいよな。少し中二っぽいか。
オープンコンバット&エンゲージ2
光一「なんて速さだ」
全力で追い付いたはいいが……。
光一「どこまでいくんだよ」
くそ! 目の前には首都最大のドームがある。野球とかするんだっけか。敵はドームに突っ込んでいった。俺も後を続くと鎧の騎士ことガラハッドがドームの中央に立っていた。
ガラハッド「流石だな」
その姿をみた俺は驚愕した。美咲を抱えていない!?
光一「おい? どこにやった? 美咲をどこにやった! 」
ガラハッド「私に勝ったら教えてやろう」
光一「上等だ。すぐにけりをつけてゲロって貰う。博士ぇ!」
空からコンテナが落ちてくる。それを素手で破壊し武器だけ手に取った。もう能力はフル解放だ。
光一「エンゲージ(戦闘態勢に入る)だ」
そして俺は敵に刃を向けた。
オープンコンバット&エンゲージ3
もう幾度となく剣を交わせた。だが敵は涼しげな顔。
ガラハッド「汝にとっての敵は、ためらいだ。本当に打ち倒す気で剣を振るっているのか?」
敵は避けるまたは剣で受け止める。攻撃はしてこない。
ガラハッド「敵のため火を吹く怒りも、加熱しすぎては自分が火傷するぞ」
弾き飛ばされる。くそっ! イラつく! 子供が大人に遊ばれてる気分だ。
ガラハッド「正義は武器に似たものである。武器は金を出しさえすれば、敵にも味方にも買われるであろう。正義も理屈さえつけさえすれば、敵だ」
正義の意味なんか知らない。でも。
光一「人さらいが正義を語るなよ!」
前に出る。俺は敵を倒して美咲を取り戻す。
ガラハッド「ふふっ」
今笑いやがったのか?
光一「何がおかしい!」
ガラハッド「カなき正義は無能だ。正義なき力は圧制なのだ。力なき正義は反抗を受ける。今の汝のようにな。なぜならは、つねに悪人は絶えないから正義なき力は弾劾される。それゆえ正義と力を結合せねばならない。正義を振りかざしたとしても弱小なのではな」
確かに力の無いくせに正義を振りかざすバカはそこらたへんのごろつきにもボコボコにされるだろう。例えば苛めだ。大勢が一人を苛める。それは酷い光景だ。許せない。だが傍観者であった者が止めたとしても大勢に負けて苛めの対象にされるだけだ。傍観者であった者は、正義を振りかざしたんだろう。でも力がなかった。
光一「力がないから諦める? 出来るわけねぇだろうが! 大切な人をさらわれてんだぞ!」
力がないからと言って正義を振りかざしてはいけない理由などどこにもない。
ガラハッド「ならなぜ全力ではないのだ? 出させてやらなければいけないのか?」
光一「戯れ言を!」
俺が全力じゃない? ふざけるなよ。助けるためにこっちは全力で戦ってる。
だが幾度となく打ち込んでも敵には当たらない。
光一「くそっ!」
吐き捨てる。なんで攻撃してこない。こちらが攻撃しては弾き飛ばされの繰り返しだ。
ガラハッド「つまらない。世話が焼ける。出させてやろう。本気という物をな。人というのは真剣勝負に立たされたとき何かを掴む。汝のそれはなんだ? それが剣? 棒ではないのだぞ?」
そういってガラハッドは横に右腕を振った。
なんだ?
右側のドームの壁が爆発した。
はっ? ここはドームの中央だ。あの腕を振る動作が何かの起爆スイッチか何かなのか?
ガラハッド「何が起こったのかわからないと言った顔だな。汝の連れの女はもうこの世にいないぞ。今の爆発の元に女はいた。意味がわかるな」
あっ……
光一「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 」
こいつはいらない。存在してはいけない。
光一「ふざけんなよぉ!」
こいつをこの手で消す。気づくと俺は敵の目の前で大振りで……
ガラハッド「大火傷だ。焼死しろ」
喉元には敵の剣。
これはもう……
オープンコンバット&エンゲージ4
歯が立たない。優人はそう思った。
「炎やら水やら土やら風を操るって魔法使いか何かかよ」
ゲイシーと名乗るピエロは、踊っている。四代元素を身に纏って。
「アハハハハハハハハ!」
狂気の笑みがうるさい。優人はもう虫の息だ。一振りでさえ能力の許容範囲を越えそうになる。もう一振りも出来ない大剣は荷物でしかなかった。
「このままじゃ悠愛を守れない」
彼の背にはゲイシーを見てから怯えたように震えている女性がいた。見た目は子供だが成人である。
「アハッ! アハーハ? もうイイカナ? イイヨネー? 」
ゲイシーが意味不明な事を言っているが彼の耳には届かない。それだけ集中していた。
「約束したんだよ。先輩とな! 悠愛を守れってね!」
先輩と男の約束をした。カッコいい男を目指す優人には先輩である光一との約束は絶対だった。それほどに尊敬していた。カッコいい男を目指す動機はちっぽけだったかもしれない。それでも優人はそれに人生を捧げるつもりであった。決定付けたのは光一との出会いだが。
「逃げるぞ! 悠愛!」
悠愛の手を掴む。逃げることは恥ではない。光一はヤバくなったら二人で逃げろといった。だが悠愛は動かない。
「アハー!」
ピエロは狂ったように笑っている。
「だめだよ」
悠愛が口を開く。
「ユウトは能力を解除して。私が戦う」
そう言ってダガーを構える。
「女の子に戦わせるなんて……それに敵の前で能力解除なんかしたら……」
戸惑いを隠せないのは優人。
「使わなければキャパは回復するの! カッコいい男はつべこべ言わんじゃないの?」
痛いところを突く。
「わかった」
能力を解除した。その印に大剣が地面に大袈裟な音を立てて落ちる。
この時を待っていた。
「えっ……なん……で……」
私は優人の腹にダガーを突き刺した。崩れ落ちる優人。
「ごめんね。これも私とパパが一緒になるためなの。そのためにユウトが倒れなくちゃいけない。それだけだよ」
道化師に目配せするとおどけたように手を振った。風が吹き荒れた。気づくとリストバンドが取れている。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
やめて。
「悠愛……その手首の傷……」
やめて。
「見ないでぇ……」
『パパなら見てもいいよ? あっやっぱりダメ』
もしかしたらパパにも見られたかもしれない。
誰にも見られたくない傷。それは私がわからない私が痛みを持って存在してることを確かめてた時期の証。心の痛みを誤魔化すために痛みを体にわからせていた。快楽主義はあの道化師と変わらない。
「痛いよ……」
こんな私は嫌だ。本当に好きになるやつなんかいない。だからこの体なんかどうでもよかった。男なんか服を脱いでしまえばみんな同じ。
「そう思ってたのに……」
涙がこぼれる。悲しみの。
「パパを手に入れるためにはなんだってする」
そう非道も邪道もましては道徳など重んじてはいられない。
「そんなの間違ってる……好きになってもらう努力をしなくちゃ……」
「わかってるよ……だけど……こんな汚れた私なんかパパは好きにならない! 現にパパは同僚の次はアイドルに夢中なんだよ!」
なんで好きになっちゃったんだろ……。資格なんてないのに……。
「パパが好き。誰にも渡さない」
そう誰にも。
「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」
道化師が盛大に笑っている。
一番下にいたと思っていたのにまだ下があったなんてね。
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